女性が抱える健康課題を技術や知識、サービスで解決することの総称とされるフェムテック/フェムケア。多くの企業・ブランドがフェムテック/フェムケア関連のアイテムを発売しており、その業種は実に多種多様。2022年3月にフェムテック/フェムケア専門店「byeASU(バイアス)」をオープンしたのは、前身となる会社までさかのぼると160年以上の歴史を持つ総合商社、双日グループ。なぜ双日がフェムテック/フェムケア事業を始めたのか、担当者の想いを聞いた。
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お話を伺った方々
双日インフィニティ株式会社
(左)新規事業推進室長 小林 稔さん
(右)ソリューション部長 植村俊雄さん
今回のプロジェクトのきっかけは?
小林さん(以下、敬称略) 今回の企画・運営を行っているのは、双日グループの、双日インフィニティになります。弊社は約60年にわたって、アメリカのマックレガーというブランドの輸入販売を中心に展開しているアパレル企業ですが、アパレルと並行して新しい事業を起こそうということになりました。そこでいろいろなテーマをピックアップしていた中で、女性の活躍推進や女性の健康課題の解決に取り組む事業を始めようとなりました。以前から、双日グループは女性の活躍推進や健康課題の解決に取り組んでおり1つのテーマとして研究を進めていたことと、このテーマについて社会の関心が高まってきていることが、決定の主な理由となります。
そして、マックレガーを通じて以前からお取り引きがあるイオンモールさんも新しいビジネスの創出の1つとして、フェムテック/フェムケアというテーマを取り組んでいらっしゃったので、両社が共同でフェムテック/フェムケア事業を構築していく運びとなったのです。
双日インフィニティ・イオンモール合同で立ち上げたプロジェクトチームは男性7名、女性7名の合計14名です。店舗の場所がイオンレイクタウンkaze になったのは、まだフェムテック専門店が少ない都心郊外にあること、今回は実験店舗としてのオープンなので、様々な人が訪れる大型商業施設のほうがお客様のリアルな声、ニーズを把握しやすいと考えたからです。イオンレイクタウンkaze に実験店舗に適した出店スペースがありタイミングの良さもありました。
Q:開店まで、苦労したことや難しかったことは?
小林 今回のコンセプトを、お客様にどうやったらわかりやすくお届けできるかというところは、すごく悩みました。ただ商品を陳列するだけでは、いわゆる物販店舗になってしまいますし、今回は物を売るだけでなく、「女性の健康課題に気づきを得ていただき、それを解決へと促すサービスや物があることを知っていただきたい」と思っていたので、商品ラインナップや内装にこだわりました。また、お客様の課題をお聞きしつつ商品やサービスをご紹介して、納得いただいた結果、お買い上げいただければいいなと思ったので、接客についてもこだわりました。そのため、お客様が気軽にご相談いただけるよう、温かい雰囲気の店となっています。特徴的なのは、店舗の中心に木のオブジェを置いていることです。そこに女性の健康課題やお悩みを木の実の形で下げていまして、我々はそれを「悩みの実」と呼んでいます。木に実がなるのが珍しいことではないように、こういった悩みは多くの人が共通して持っていることで、普通にあることなのですというメッセージをオブジェに込めました。
植村さん(以下、敬称略) 店内のディスプレイは、7つのカテゴリーごとに商品を陳列しています。女性のココロとカラダの健康課題を7つに分類し、ピクトグラムを作って、女性が店内に入ったとき、「自分が抱えている悩みだったら、ここに行こう」とわかりやすいようなつくりにしています。例えば、「妊活サポート」カテゴリーでは、シリンジ法キットや精育支援サプリメントなどを置いています。「セクシャルヘルスケア」カテゴリーではカップルで使用できるアイテムもあり、カップルでご来店いただくお客様もいらっしゃいますね。
小林 社会にはいろいろな方がいらっしゃるので、「バイアス」をオープンするにあたり、どんな人をターゲットにするかは非常に難しかったです。イオンレイクタウンは日本最大の商業施設で、ファミリーを中心に幅広いお客様がいらっしゃいますし、我々としても、どなたでも入りやすい店舗をつくりたかったので。企画段階では、生理が始まった娘さんをつれてお母さんがいらして、生理ケア商品を見ながら娘さんに教えてあげるといった光景が見られるような店舗にしたいというイメージもありました。
Q:フェムテック/フェムケア事業は今後どのようにしていきたいですか?
小林 「byeASU(バイアス)」という店名は、『自分の中のバイアスをなくし、明るいあしたへ向かっていけるように』という想いが込められています。「これまでの自分にバイバイして明日(あす)へ」、ということですね。また、ジェンダーバイアスをなくし、性の悩みなどを恥ずかしがらずに相談できたり向かい合ったりできる社会づくりに、少しでも貢献していきたいという想いも込めています。
【今回のまとめ】
フェムテック/フェムケア専門店が大型商業施設にオープンするのは珍しい。その理由を考えると、「施設のメインターゲットであるファミリー層にはあまり向かない内容だから」という答えが浮かび上がる。けれど、その考えこそ、性の悩みはあけっぴろげにしないものというバイアスがかかっているのだ。性の悩みなどを打ち明けられる社会が実現する過程では、ショッピングモールにフェムテック/フェムケア専門店があるのが見慣れた光景になるフェーズが必ずあるだろう。双日インフィニティとイオンモールが手掛ける「バイアス」は近い未来の光景を先取りしているのかもしれない。
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この記事を書いた人
ライター金山 靖
文房具、家電、インテリア、雑貨などライフスタイル系グッズに精通。商品の企画開発担当者をはじめ、タレントや文化人などへのインタビュー経験も豊富。カップ麺やお菓子などグルメ全般にも造詣が深い。
Twitter:@kuunelu5963
Website:https://monomax.jp/
お問い合わせ:monomaxofficial@takarajimasha.co.jp
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