浴衣の反物は幕内力士の名刺代わり!
豊ノ島さんが現役時代に仕立てた浴衣。アジアの民族衣装に使われる生地が使われており、遊び心あふれる雰囲気に仕上がっている。
お相撲同好会 幕内力士はご自分が作った浴衣を贈りあうことがあると聞きます。
豊ノ島 そうですね。名刺交換のような感じで贈りあいます。部屋ごとにやり方は違いますが、僕は幕内に上がったときは、全幕内力士に贈って、あとは親交のある力士や一門の方、後援者の方やお世話になっている方に贈りました。あとは、高知県出身の力士全員に贈っていました。300反ぐらい作ったので結構お金もかかりました。反物は幕内力士しか作れないんですよ。最初は作れるのが嬉しかったですが、年々懐が大変だなあと思うようになりました(笑)。
お相撲同好会 着物を贈るのではなくて反物を贈るのですね。
豊ノ島 そうです。反物を贈って、その反物で各自のサイズに合った浴衣に仕立ててもらうんです。だから、巨漢の力士には反物を多めに贈ったりしましたね。贈った浴衣を着てくれているのを見ると嬉しかったです。たまに若い衆が「豊ノ島関の浴衣がとてもかっこいいので、反物をいただけないでしょうか」って言ってくることがあったのですが、それも嬉しかったですね。
お相撲同好会 浴衣のデザインも自由なのですか?
豊ノ島 染め抜きと同じで、結構自由です。しこ名を入れても入れなくてもいいんですが、しこ名をデザインにすると、ややこしいことが起こったりするんです。例えば、「豊ノ島」という名前が入った浴衣を若い衆が着ていたりすると、その人が「豊ノ島」だと間違われたりすることがあるんです。だから、名前が入った浴衣は避ける力士もいますね。
お相撲同好会 確かに。着ている着物にしこ名が入っていたら、本人だと勘違いしてしまいますね。
豊ノ島 せっかく反物を作るなら着てほしいと思ったから、流れるようなくずし字で、ひらがなで「とよのしま」と書かれているデザインを作ったりしました。すぐにはわからないけど、よく見たら豊ノ島という字が入っているっていう。その反物は結構浴衣に仕立ててくれる人が多かったですね。
お相撲同好会 巡業でたまに廻しの上から帯もしめないで着ている力士がいますが、ああいう着方をしてもいいのですか?
豊ノ島 それは泥着(どろぎ)ですね。稽古の後や巡業などで、廻しの上に羽織る用のものです。廻しだけで歩くのもあれだから、一枚羽織ってという感じです。もともとは浴衣として着ていて、古くなったら泥着にするという使い方が一般的です。
お相撲同好会 贈り物としてもらった浴衣も、泥着として使うことがあるのですか?
豊ノ島 そうなんですよ。昔自分が贈った浴衣が泥着に使われているのを見たときは、「泥着か~」ってなります(笑)。
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