約1年の開発期間を経て、ついに完成したPORTER×MonoMaxのコラボバッグ「PORTER IDEAL」。そのこだわりのポイントを、別注を手がけたデザイナーの松村力弥さんと、MonoMax編集長・柚木の対談形式でお届けする。
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取材/槻真悟 撮影/西村廣起
――やはり、このトートバッグの最大の特徴は取り外し可能なクラッチバッグが付属する点ですよね。
柚木 MonoMaxの読者の方々は、ビジネスシーンでトートバッグを使っている人が多いというアンケート結果がありました。そこで、かっこいいことは大前提で、より実用的な製品を作れないか……と、考えたときにこのアイデアが浮かびました。最近はタブレットを使う人が増えているので、タブレットを収納できて、ビジネスツールもきれいに収まるクラッチバッグが欲しい。しかもそれがバッグ本体と違和感なく連動させられれば理想的だなぁと。
松村 実は、ちょうど柚木さんからお話をいただいたタイミングで、弊社の定番商品の新作としてサブバッグを取り付けられるような仕様のバッグを企画していたので、当初はその延長線上の検討で対応できると思っていたんですが、実際に企画が動き始めるとかなり設計を見直すことになりました。
――それはなぜなんでしょうか?
松村 着脱式のクラッチバッグのサイズが、僕が企画していたバッグよりもだいぶ大きかったからです。
柚木 クラッチバッグをタブレットなどが収納できるサイズにしたので、本体と合体させた時に不安定にならず動かないようにしっかり留めたいと思ったのですが、それを追求すると着脱に難が出てしまうんです。そこを調整するのが大変だったのではと思います。
松村 そうなんです。クラッチバッグの固定方法は、当初ホック方式を考えていたんですが、最終的には両方のバランスを重視してクリップ方式にしました。クリップの取り付け方向、本体側のアタッチメント部分も含め、ここがいちばん試行錯誤した点ですね。
柚木 本当にすごくバランスのいいところに落ち着きましたね。大満足です。
――ほかに苦労した点はありますか?
松村 クラッチバッグを外したとき、本体とクラッチバッグの双方ともが不恰好にならないように調整するのが大変でした。単体でもきちんと使えることが前提でそれぞれの“表情”にも注意を払う必要があったので。
柚木 どちらかに取り外しの跡が残ると台無しなので、いかに見た目の影響を少なくするかということですよね。僕自身も、当初はクラッチバッグが付属するシンプルなトートバッグを……というイメージだったんですが、途中から「外してもかっこいい」を追求したくなって色々お願いしました。でも正直いうと、クラッチバッグを取ったときの本体がこんなに自然でおしゃれになるとは、想像していませんでした(笑)。
――メイン素材をバリスターナイロンにしたのはなぜですか?
柚木 「これからの時期に向けて、クールビズスタイルにハマるんだけどプライベートで使っていてもサマになる」がコンセプト。それを元に素材を考えた結果、ポーターの定番商品のなかでも実績のあるバリスターナイロンを選びました。僕はこの素材が本当に好きで、この素材のバッグをたくさん持っているんです。頑丈だし、ビジネスにもマッチするし、適度なカジュアル感もありますし。まさに僕にとって理想の素材なんです。
――それ以外の細かな部分を見ても、語れるところが満載ですね。
柚木 いちばん最初、編集部員から「理想のトートバッグ」のアイデアを募集したら、みんな好き放題に意見を書いてきて(笑)。これまでたくさんのバッグを見てきているスタッフだけに、こだわりが多すぎて、すべてを盛り込んだら販売価格が7~8万円くらいになるんじゃないかと思いました。
松村 新製品を開発する場合、基本的には3回目のサンプルで仕上げて、それを最終生産見本にするんですが、今回は4回サンプルを作りました。でも、サンプルを作り直すたびに細かいところをどんどん詰めていけたので、結果としてそれがよかったんだと思います。時間とともに進化していった印象です。
――具体的にはどういった部分でしょう。
松村 たとえばセカンドサンプルまでは、バッグ本体に芯材を使っていなかったんですが、サードサンプルから入れてみたり。クラッチバッグも、サンプルを更新する過程でハンドルを付けたり、マチをなくしたりと変化しています。何よりいちばん大きな変更点は、最終サンプルで実現した「トートバッグの中にクラッチバッグを固定して、バッグインバッグとしても使えるようにする」というアイデアです。これ、僕はまったく考えていなかったんですが、サードサンプルのときに柚木さんから「こうやって使えたらさらに便利になりませんか?」という提案があって実現しました。
柚木 こちらは作ることに関しては専門外なので、セオリーを無視して「あれも欲しい、これも欲しい」と打ち合わせのたびに新しい要望を出して(笑)。最終的にはほぼすべてを汲んでもらっているんですよね。見えないところ、専門的な部分で松村さんにフォローしてもらえたからこそ実現した製品です。
――まさに編集部側の理想を最大限に詰め込んだバッグなんですね。
柚木 本当にそうなんです。トートバッグの背面にはキャリーケースとセットアップするためのキャリーバー通しがあるし、トートバッグ自体はスリムな縦型で、電車で太ももの上に置いても収まりのいいサイズ。ショルダーバッグとしても使える2WAY仕様でもありますし、「ON・OFF使える見た目や機能」「実用的なクラッチバッグが付属」「容量充分、小分けも収納も可能なポケット」「旅行で役立つディテール」などなど、いま編集部が考える“MonoMax読者が望む要素”をすべて詰め込んだ感じです。本当にしつこいんじゃないかってくらい盛り込みましたね(笑)。これぞまさに“理想のトートバッグ”ということで、モデル名は「ポーター イデアル」にしました。
松村 機能を詰め込みすぎると、どうしてもごちゃごちゃしがちなんですが、クラッチバッグ側にタブレットや細かなビジネスツールを、トートバッグ本体にPCスリーブや大判の書類などを……という風に役割を振り分けたことで、きれいにまとめられました。約1年の歳月をかけただけあって安定感も充分ですね。
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