開発者を突撃!“驚くほど軽~く切れる”理由を徹底解説!
コクヨ グローバルステーショナリー開発第3部/中津康宏さん
家電メーカーのデジカメ開発からコクヨに入社。針なしステープラーの開発を経て、高級ハサミ〈HASA〉などハサミ製品の開発を担当。
開発のきっかけは……自分が感じた不満の解消がスタートだった
2017年に発売された〈サクサ〉は、軽いキレ味が人気のハサミ。約1年前、リニューアルの企画が立ち上がった。
「環境配慮の観点からパッケージを紙製へ変えることが決まり、それと並行して商品もリニューアルしようということになりました。そこで『キレ味はそのままに、誰にとっても使いやすいハサミ』を目指すことに決まったのが、本リニューアルの発端です」
そこで中津さんは、左利きでも使いやすいハサミを作ろうと思い立った。
「私自身、左利きなのですが、ハサミ開発の担当になったことで、右利きと左利きにはハサミの使いやすさに大きな差があることを知りました。誰に頼まれるわけでもなく、約3年前から自主的に左利きでも使いやすいハサミの研究を行っていたのですが、今回のリニューアルでそれを生かそうと考えたのです」
開発で苦労したのは……傾斜インサートの効果の検証!
中津さんの自主的な研究によって、ハンドルをねじれた形状にすると左利きが使いやすいことがわかった。しかし、それでは右利きが使いづらくなるため、刃にねじれと同じ効果を生む角度をつけることにした。これが“傾斜インサート=ハンドルに対して刃を傾けて成形する手法”の始まりだ。
「この構造はバランスが重要です。ハサミを使うとき、刃には切る力と刃の隙間を締める力がかかるのですが、切る力を落とさず締める力を強めるのが大変でした。製品化が決まった後も、誰が使ってもキレ味がいいというエビデンスを取るのに苦労しました。ハサミのキレ味は、感覚ではわかるけれど数値化しづらく、また、工程で手作業が入るため、出来具合が一丁一丁微妙に変わります。キレ味のよさが傾斜インサート由来であることを検証するのにかなり時間を要しました」
傾斜インサートのキレ味の検証を行うために作成した特別なサンプル。1つの刃に角度の異なる2種類のハンドルを搭載している。
傾斜インサートでベストな傾きを探るため、様々な傾斜角度のサンプルを作り、数多くの実証データを取った。
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この記事を書いた人
ライター金山 靖
文房具、家電、インテリア、雑貨などライフスタイル系グッズに精通。商品の企画開発担当者をはじめ、タレントや文化人などへのインタビュー経験も豊富。カップ麺やお菓子などグルメ全般にも造詣が深い。
Website:https://monomax.jp/
お問い合わせ:monomaxofficial@takarajimasha.co.jp
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