磁石を使うことで耐衝撃性の維持とデカ針デザインを両立できた!
「GA-V01」のすごさは、見かけだけの話ではありません。いくつもの革新的なテクノロジーが搭載されているからこそ、飛び抜けた独創性を実現できているんです。その象徴が、今作で初めて搭載したという「マグネティックホールディング構造」にありました。
「G-SHOCKの高度な耐衝撃基準をクリアしようとした際、永遠の課題として上げられるのがアナログ針の取り付け方でした」
そう話すのは、長年にわたって時計開発に従事してきたという水津さん。アナログ針の自動位置修正技術など、G-SHOCKのモジュール開発を担ってきたエンジニアです。
「時計が衝撃を受けた際、そのモーメントによって針がグルリと動いてしまうと、シャフトから伝わった内部のモーターまで影響を受けてしまいます。そうなると運針が遅延したり、場合によっては故障につながってしまうのです」
こうしたリスクを回避するため、軽量&小型化した針を使って衝撃時に受けるモーメントを減らしたり、シャフトとモーターをガッチリ固定したりしていたのだとか。しかし水津さんは、長年の経験をもとに、新たな解決策はないかと模索し始めます。
「モジュール内のモーターには磁石が使われているのですが、これを針のシャフトにも応用できるのではないかと思いついたのが、『マグネティックホールディング構造』が生まれたきっかけです」
「マグネティックホールディング構造」の仕組みをわかりやすくしたのが、上のイラスト。通常、内部モジュールに通じる垂直シャフトと針はガッチリ固定されているのですが、「GA-V01」はスポッと穴にはめているだけで、無固定の状態になっています。しかし、シャフトと針に磁石を据え(イラスト内で赤と青で示した部分)、N極とS極が引き合うことで固定させているんです。
「普段は磁力でくっついていますが、その磁力よりも強いモーメントが針にかかるとシャフトに負荷をかけることなく、針部分だけが動くようになります。そのことから、この針自体をショックリリース針と名付けました」
実際に落下させてみた様子がこちら。落下した瞬間、長針が勢いよく反時計方向に回っていくのがわかります。これは水津さんが言うように、針にかかるモーメントが磁力を超えたことによる動き。もしこれがショックリリース針でなければ、針の勢いがシャフトから内部モーターに伝わって「グギギッッッ」……と不気味で破滅的なインパクトをもたらしたかもしれません。
実際に「GA-V01」で使われているシャフトも見せてもらいました。上部が針と組み合わさる場所。1mm径もないところに、強力な磁石が取り付けられています。
取材時には、マグネティックホールディング構造の実証実験も。勢いよく手に打ち付けて衝撃を与えると、一瞬長針がグルンと動いてリリースされ、すぐに正しい位置へと戻って来る様子を確認できました(いくらタフとはいえ、衝撃を与えると予期しない不具合が起きたり外装に傷がついたりしますので、確かめる際はご注意を!)。
ちなみに針がリリースされた場合、完全に正しい位置に戻るには最大で数分かかる場合もあるとのこと。20秒に1回ステップ運針するのに合わせて、微調整されるそうです。
「本当にちょっとした思いつきで開発した構造なのですが、面白いものを生み出せたと感じています。これまで私が開発してきたなかで、1、2を争う技術です」
このマグネティックホールディング構造を採用したことで、重さや大きさの制限が解かれ、より自由な針のデザインが可能に。「GA-V01」では2つのサークルがあるデカめの長針が使われ、その先進性を大胆に表現しています。ちなみに同構造は今後の製品開発でも生かされる予定とのことで、後継機の登場も今から楽しみです。
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この記事を書いた人
ライター横山博之
カバン、時計、ファッションなど男性のライフスタイルを彩るモノを領域とするライター。デザイナーや職人などモノづくりに関わるキーパーソンへのインタビュー経験も豊富。時代の先端を行く技術やカルチャーにも目を向ける。
Website:https://monomax.jp/
お問い合わせ:monomaxofficial@takarajimasha.co.jp
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