無料から1円値上げしたことで「恐ろしく売れた」キャンペーンとは
商品はあくまで定番となり得るもの、そしておいしさ重視。だけど「見せ方」を工夫するのがファミリーマート流です。
「僕らの仕事は“認知を上げる”ことです。商品について知ってくれた人しか購買行動はしてくれません。そのため、どれだけたくさんの人に知ってもらうかが大切なわけですが、“知られていないこと”は“やっていない”ことと一緒だと考えています。
知ってもらうためにまず大切なのは、① 話題性があること、② その情報が面で展開されていること。面とは、まずCMで目にする、その後スマホの中で情報を目にする、さらに家族がその話題を口にする……など3回その情報に触れると、人は『これ流行ってるんだ!』と認知してくれるんです。そして1人に3回リーチするためにはやはり話題性が大事。だからちょっと尖ったこととか変わったこととか、お茶目でユーモラスな要素を付加できるかをメンバーと日々一生懸命考えていますね」(橋本氏)
これまで担当した企画で最も「話題性」で成功したものはどんなキャンペーンだったのでしょうか。
「『ファミマのブラック「フライ」デー』です。コンビニチェーンでブラックフライデーのキャンペーンを実施しているところはありませんでした。そこで最初は黒い商品を集めるとか黒い商品を作るかとか考えたのですが、黒いものはあまりうまくいかなくて(笑)。ファミマの強みって何だろうって考えた時に“フライ(揚げ物)”が強いと気づいて“ブラック”じゃない、“フライデー”のほうで行こうと。『揚げ物2個買うとファミからを無料で差し上げます』としたんです。当時はファミからがおかず需要としても良いことが知られていなくて、知ってもらう良い機会にもなると考えました。
ただ、2~3年やっているうちに私たちもお客様も見慣れてきてしまって。そこで『揚げ物2個買うとファミからを1円で差し上げます』と値上げをすることにしました」(橋本氏)
世の中的には毎月のように「値上げ」が話題になりますが、そのことを逆手に取った戦略です。テレビなどでも多く取り上げられ、無料だった時よりも客からお金を1円もらっているにも関わらず「恐ろしく倍」な数商品が売れたといいます。
「私たちとしては企画のフォーマットは何も変えておらず、むしろお客様から1人1円ずつカンパしていただいたような状況です。頭をひねって言い方を変えるだけでこんなに変わるとは」(橋本氏)
こういった独自の企画はファミリーマートらしさでもありますが、他チェーンとの差別化を意識しているわけではないのだそう。
「よく各チェーンで常にお互い監視し合っているのかと思われがちですが、ファミリーマートは特にありません。だからたまに企画がカブったりしてるじゃないですか(笑)。本当は他チェーンのキャンペーンについて勉強した方が良いのかもしれないですけど、それよりもやりたいことが目の前にある。もし他社の要素を真似することがあるとしたら、僕らは他の業界の事例を参考にすると思います。そのほうが新しくなると思うので」(橋本氏)
原材料費より お客様が喜ぶほう、そして何よりも新しさと話題性を重視……これが「ファミリーマートに行くとワクワクする」理由でした。これからも斬新な話題性でコンビニ全体の「面白さ」をけん引してくれることを楽しみたいと思います。
文・撮影/松本果歩
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この記事を書いた人
ライター松本果歩
インタビュー・食レポ・レビュー記事・イベントレポートなどジャンルを問わず活動するフリーランスライター。コンビニを愛しすぎるあまり、某コンビニ本部員となり店長を務めた経験あり。日本酒・焼酎・発酵食品が好き。
Website:https://monomax.jp/
お問い合わせ:monomaxofficial@takarajimasha.co.jp
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