最近はクルマの運転の仕方が変わってきたという声をよく聞く。簡単に言ってしまうと、運転のセンスや常識がないドライバーが多いということ。制限速度までキッチリと出せなかったり、突然左右確認もせずに横道から出てきたり。バックミラーを確認することなく、追い越し車線をノロノロと走り続けて、あおり運転を誘発など、さまざまな事象に表れているのは気になるところだ。
そして今、新たなるあおり運転が問題になっている。それが曲がり角でのハンドルのあおり。交差点を左右に曲がる際に一般的には路肩に沿って曲がっていくとされていて、教習所でも事前に曲がる側に寄せてから脱輪しない程度に離れながら、斜め後ろなどを確認して曲がっていくように指導されている。
それに対して最近目につく新たなあおりとは、一回反対側にハンドルを切って車体をあおってから曲がるというもの。簡単に言ってしまえば、トラックやバスが狭い曲がり角を曲がるときのような感じと言うとわかりやすいだろうか。トラックなどの大型車の場合は内輪差が大きいので仕方がないが、当然乗用車では必要はなく、スッとスマートに曲がるのがベストだ。
左折車線もしくは右折車線の横を抜ける際に、このあおり運転をやられると、間違えてクルマが斜め後方確認をしないで飛び出てきたと思い、とてもヒャッとさせられる。実際には冗談抜きで心臓が止まる思いだったりするので、やめて欲しい行為だ。
なぜこのような曲がり方をするのかというと、いろいろと検証や検分をした結果、理由はいくつかある。まずは安全性のためにボディに厚みが出て、反対側の確認がとても行いにくくなっているので、うまく寄せられずに余裕を取るために一回角から離れて曲がるというのが一番大きい。もちろん車幅感覚がなくなってきているのもあるだろう。
そしてもうひとつがハンドルの握り方だ。基本は10時10分あたりを両手で握るとされていて、こうすると左右の手に押したり引いたりできて、スムーズに回せるから。緊急時もサッと左右に切れるので安全性も高まる。
それが最近ではてっぺんの位置、つまり12時の部分を片手でもつ、いわゆる“あんちゃん持ち”が増えているから。街中や対向車をよく見ていると半分以上がこの持ち方だったりする。あんちゃん持ちが増えた理由は、こちらもいくつかあって、まずはパワステが軽くなって片手でも回せるから。アームレストの装着も増えているので、なおさらだ。そしてもうひとつは運転中もスマホをいじりたいから。運転中の操作はもちろん違法だが、やめられないのがスマホで常に見ていたい衝動に駆られるのだろう。同じパターンで電子タバコを片手に持つというのもある。
やってみるとわかるが、てっぺん部分を片手でもっているとそこからスムーズに切り込むことは非常に難しい。体の中心線よりも反対側に手を伸ばしていくことは体の構造上、じつは不得意。だから一旦反対側に切ってから、曲がりたい方向に切り込むと勢いがついて楽なので、あおり運転になってしまうわけだ。
正しい握り方をすればいいだけだし、タイミングよく切っていけば別に反対側に一回振ることも必要ない。やっている人は意識していないかもしれないが、安全回避にもかかわることなので、一度自分の運転を見直してほしい。
このあおり運転以外で曲がる際に気になるのが曲がりきれない感じで膨らんで曲がるのも多いこと。バスやトラックが曲がってくると、反対車線まで先端がはみ出るのと同じ感じなのだが、こちらの理由はハンドルを切るのと戻すタイミングが遅いから。いずれにしても運転において以前とは違う、なにかが起きていると言っていい。
文/近藤暁史
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ライター近藤暁史
男だてらにお堅く学習院大学文学部国文学科卒。ファッション誌から一気に転身して、自動車専門誌の編集部へ。独立後は国内外の各媒体で編集・執筆、動画製作なども。新車、雑ネタを中心に、タイヤが付いているものならなんでも守備範囲。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。自身のYouTubeチャンネル「こんどう自動車部」では、洗車・自動車のメンテナンスなどを中心に、クルマに関わる裏技を紹介中!
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