刃物産業に特化した街として世界三大刃物産地のひとつに数えられる岐阜県関市。
そんな刃物の街に本拠地を置く貝印の関孫六は包丁の名ブランドだ。
その関孫六シリーズから新たに最高級ライン「要」が登場した。
教えてくれたのは
貝印 マーケティング本部 デザイン部/大塚 淳さん
貝印 研究開発本部 開発部/百瀬孝一さん
刃材に特殊ステンレス刃物鋼を用い、長切れするのに研ぎやすい
上からブロック肉を調理するのに十分な長さがある6寸半、小ぶりな長さと十分な刃幅でオールマイティーに使用できる5寸、ペティナイフの代わりになる4寸の3サイズを展開。
―目を惹きつけるデザインが印象的な「関孫六 要」ですが、その特徴を教えてください。
大塚さん 鳥居反りと呼んでいますが、「関孫六 要」は包丁の背からハンドルにかけて反っているのが特徴です。これは日本刀の形状が持つ、対象物へ効率的に力が加わるという機能性に着想を得て、食材を切る作業に応用した機能美を兼ね備えた形状なのです。
百瀬さん これまでの関孫六シリーズに用いていた鋼材より高い硬度の特殊ステンレス刃物鋼を芯材とした三層鋼を使用しているのも特徴です。
大塚さん 包丁で重要なのが鋼材です。「関孫六 要」に使用しているのは錆びにくく長切れする材料。
刃の厚み自体がかなり薄い仕上げなので食材に対して切り込みがよく、非常に研ぎやすくなっています。
―具体的にはどのように研ぎやすいのでしょうか?
百瀬さん 硬い単層鋼を用いれば長切れしますが、硬くなれば硬くなるほど研ぎにくくなります。
「関孫六 要」には真ん中に硬く、両側を柔らかい素材で挟み込んだ三層鋼を使用しているので単層鋼より研ぎやすくなっています。
業務として調理で使用する方は包丁を毎日研がれると思いますが、一般ユーザーが使用するなら月に1〜2回ほど研いでいただければ切れ味は復活し、簡易シャープナーで簡単に研ぐことも可能です。
―日常的な使いやすさはデザインにも表れていますか?
大塚さん 包丁はいろんな形や技術が増えています。そんな中で日本から発信するブランドとして日本らしさを表現するには、できるだけ少ない要素で新しいという製品にしたかったのです。
いろいろな造形を盛り込むのではなく、形状に意味があり機能があるというデザインを実現しました。
ハンドルは反っているだけでなく、八角形となっている断面は下にいくに従って細くなるテーパーをつけているため、デザイン面だけでなく人間工学上でも大変握りやすい形状です。また男性向けにデザインしましたが、実際には女性が使うことも想定されます。
そこでハンドルと刃体が接する点を少し抉ることで手の大きさに左右されず、ハンドリングしやすい形状に仕上げています。
百瀬さん 刃体とハンドルを結合する部分に口金というパーツを溶接します。その溶接した口金を磨き、滑らかに仕上げていくことによって手の当たりが柔らかくなり、使いやすくなっています。
この形状によりハンドルに水が入りにくくなり、耐久性が増すのです。また職人の技術により、ハンドルと口金の継ぎ目が触っただけではわからないほど滑らかに磨き上げています。
―刃文も特徴的ですね。
大塚さん 室町時代後期、作刀に優れていた2代目関孫六という人物がいました。その刀匠が使っていた三本杉という波を打つようなランダムな刃文をオマージュし、刃体のデザインに加えています。
現在「関孫六 要」には3サイズありますが、サイズごとに異なった刃文となっています。
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