本誌の人気長寿連載「BEAMS特撮部」。セレクトショップ「BEAMS」の特撮好きスタッフによって結成されたBEAMS特撮部が、毎回特撮に関わる様々な人・現場に取材を行っています。
今回は、クラウドファンディングで進行中の『快傑ライオン丸』や『電人ザボーガー』など、昭和の特撮作品の秘蔵写真を後世に残すプロジェクト。 作品を制作したピー・プロダクションの現社長である鷺巣詩郎さんに、当時のお話を伺いました!
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ピー・プロダクションとは?
手塚治虫や円谷英二とも懇意にしていた漫画家うしおそうじ(本名:鷺巣富雄)氏が設立したアニメ・特撮などの制作会社。今回のクラウドファンディングに関わる4作品を制作した。現社長はうしおそうじ氏の息子である鷺巣詩郎さん。
鷺巣詩郎さん/作曲家、編曲家、音楽プロデューサー。30年以上第一線で活躍し、海外でも高い評価を得る。近年の代表作はMISIA、SMAP、葉加瀬太郎、『エヴァンゲリオン』シリーズなど。
猫系ヒーロー誕生には2人の造形作家の力があった
久芳 今回ポジフィルムが発掘された4作品をはじめ、昔の特撮作品は広い世代から愛されています。
鷺巣 60年代に『マグマ大使』に代表される第一次特撮ブームがあり、70年代に第二次特撮ブームがありました。それだけでなく、昔の特撮作品は何度も再放送されていましたから、本放送を視聴した世代だけでなく幅広い世代が視聴できたのも大きいでしょうね。
久芳 その当時、鷺巣さんの中で印象に残っていることはありますか?
鷺巣 大橋史典さんにとても可愛がっていただきました。『マグマ大使』などで着ぐるみを創作した天才的な造形作家です。父と一緒に京都の大橋さんのお宅によくお邪魔しました。大橋さんは犬や爬虫類など動物をたくさん飼っていたり、ちょっと浮世離れしており、まるで外国人のような方でした。子どもの自分にはそれが楽しかったのでしょう。あるとき大橋さんが、飼っていたシャム猫を父に譲ってくれました。まだ日本でシャム猫など見かけない時代です。独特のキリッとした表情から父は何かを感じとったのではないでしょうか。あのシャム猫が『ライオン丸』や『タイガーセブン』などのキャラクター誕生の鍵になったのではないかと今では思っています。
久芳 非常に興味深いです。
鷺巣 『ライオン丸』の造形は画家でもある高山良策さんです。やはり優秀な職人でピープロ作品に不可欠です。
久芳 『宇宙猿人ゴリ』(後に『スペクトルマン』に改題)で、ゴリのマスクを作られた方ですね。
鷺巣 そうです。ゴリとラーのマスクについては印象深い思い出があります。映画『猿の惑星』の公開当時、父と観に行ったのですが、隣の席でいつになく父が興奮しているのがわかりました。そのときのインスピレーションが『宇宙猿人ゴリ』に換骨奪胎され、それまでの日本には無いビジュアルを高山さんと一緒に完成させたのです。
久芳 リアルな造形もそうですが、作品全体が醸し出す独特の雰囲気は、ピープロ作品がコアなファンの支持を集める要因になっていると思います。
鷺巣 ピープロは駄菓子屋のような存在です。また音楽にたとえれば、東映や円谷がポップスだとしたら、ピープロはブルーズみたいにどこか憂いを帯びている。そこが人の心を惹きつけるのかもしれません。今回こういったお話をいただき、期待半分、心配半分ではありますが、およそ半世紀も前のスチール写真から今とは異なる匂いや肌合いを感じていただき、これがピープロ独特の世界なんだと親しみを持っていただければ嬉しいです。
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この記事を書いた人
ライター金山 靖
文房具、家電、インテリア、雑貨などライフスタイル系グッズに精通。商品の企画開発担当者をはじめ、タレントや文化人などへのインタビュー経験も豊富。カップ麺やお菓子などグルメ全般にも造詣が深い。
Twitter:@kuunelu5963
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