対向車や並走しているクルマを見て気になることがある。それがハンドルの握り方だ。教習所では時計に例えて10時10分の位置を両手で握るように教えられ、シート位置も軽く肘が曲がる程度に合わせる。実際にはそこまで厳密でなくても、だいたいそのあたりを握るのが楽だし、操作しやすい。体も正面に対して真っ直ぐになるので疲れにくいのもメリットだ。
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そもそもハンドルが丸くて、両手で操作するのは引いたり、押したりすることで滑らかかつ確実に回すことができるから。その結果、スムーズな走りだけでなく、危険回避などの安全性も高まることにもつながる。つまり、ハンドルの握り方ひとつ取ってもかなり重要なのだ。
そして昨今気になる握り方はなにかというと、使うのは片手のみ。右ハンドルの場合は右手がほとんど。そして握るはハンドルの一番上で、握るというよりは乗せているだけ。片手のみゆえ、手は伸びっぱなし。体も傾いているし、場合によってはシートをかなり倒して体は起きた状態だったりする。ちなみにそれでは上半身を支えるのは相当大変だと思うが、左肘をセンターコンソールやアームレストに乗せて支えていることが多い。どっちにしろ、疲れると思うのだが。
この握り方は以前からあって、「あんちゃん握り」や「テッペン持ち」などと呼ばれるもの。ただ、最近は急増しているゆえ、街のあちこちで見かけるようになって、ヘタをすると遭遇するクルマの半分以上がそのような握り方をしている印象すら受ける。
そもそもなぜこのような握り方が誕生したかというと、パワステとオートマの普及がきっかけ。マニュアルだと作業をいろいろとしなくてはならないので姿勢は真っ直ぐになるし、パワステがないと両手で回すしかない。それがパワステの普及で、片手でもクルクルと回せるようになったから、両手で握る必要がなくなってしまった。日本車の場合とくに、かなり軽いのが高級車の証的な意識があっただけになおさらだ。
しかし最近になって爆発的に増えているのはなぜか? まずはスマホ運転の増大だ。電子タバコの場合もあるが、片手に持って操作したり吸いたいとなるとハンドルを持つのは必然的に片手になってしまう。そもそも運転中のスマホ操作は違反行為なのだが、それでも見たいのがスマホなだけに、とにかく多い。
加えて、昔ほど飛ばさなくなって、ゆっくり走るクルマが増えているのもある。簡単に言ってしまえば、ダラッとした運転なので片手で十分ということなのだろう。ただ、ゆっくり走ること自体もスマホが原因のように思えるので、どちらが先かはわからないが。
そしてこれが意外に重要というか、矛盾している気もするのが、安全装備の充実だ。車線からのはみ出しは見てくれるし、車間距離も同様。信号が青に変わったら教えてくれるなど、運転支援というだけでなく、スマホ操作支援になっている側面もある。運転に集中しなくてもよくなった結果があんちゃん握りやテッペン持ちに表れているのかもしれない。
いずれにしても事故につながりかねないので、正しい姿勢と持ち方で運転するのが基本ということは忘れないでほしい。また、「そんなの増えている?」という方は注意して見ていると、対向車のフロントガラスに点が続々と見えるはず。車内は暗いだけに、ポツンと握っている手だけが目立っているのだ。
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この記事を書いた人
ライター近藤暁史
男だてらにお堅く学習院大学文学部国文学科卒。ファッション誌から一気に転身して、自動車専門誌の編集部へ。独立後は国内外の各媒体で編集・執筆、動画製作なども。新車、雑ネタを中心に、タイヤが付いているものならなんでも守備範囲。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。自身のYouTubeチャンネル「こんどう自動車部」では、洗車・自動車のメンテナンスなどを中心に、クルマに関わる裏技を紹介中!
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