バラバラにして分解!? リミックスによってG-SHOCKの哲学を再解釈!
──そして、G-SHOCK40周年記念シリーズのひとつである「クリア リミックス」にも携われたと。開発の経緯について伺えますか?
「40周年を記念するシリーズはいくつかあって、それぞれ異なるコンセプトを持っていますけど、すべてに共通するテーマがあるんです。それが、“フィロソフィーリボーン”。G-SHOCK誕生当時の哲学や理念を、40年を経た現代においてどのように解釈し、デザインや構造に落とし込めるのか? そこがスタートなんですね。この『クリア リミックス』に関して、僕はまずG-SHOCKそのものを分解してみるところからはじめました」
──分解してみる?
「G-SHOCKの哲学や理念を分解し、紐解いていこうという考えです。そして実際にも、いくつかのモデルをバラバラにしました(笑)。そこから、分解したパーツを別のパーツを組み合わせてみたり、別の素材に置き換えてみたりして、再構築を図ったんですね。その中で、『液晶をスケルトンにできるんじゃないか』『異素材のバンドを組みあせてもいいんじゃないか』といった発想が生まれたんです」
G-SHOCKの哲学や理念を分解するにあたり、無数のアーカイブも参考にしたとのこと。
──なるほど。リミックスしていったわけですね。
「はい。やはりG-SHOCKはストリートのカルチャーと近い存在です。ストリートにはベーシックなところだけでもコラージュやサンプリングといったデザイン技法があり、G-SHOCKにも適応することで新しい表現ができると思うんですね。特に今ってパソコンやツールがものすごく発達していて、若い人たちはインスタグラムなどのSNSで思い思いに作品を投稿しています。だから今回の『リミックス』も若い人たちとの親和性は高く、関心を寄せてもらえるのではないかなと思っているんです」
既存のモデルをバラバラにした上でくっつけてみたり、3Dプリンターで一部パーツを自作してみたりと、さまざまな“リミックス”が行われた。
電子機器メーカーとしての象徴がようやく日の目を見た!
──特にインパクトが大きいのが、モジュール基盤が“スケスケ”なデジタルモデルですよね。
「そうですね。G-SHOCKを再構築するにあたり、私たち自身についても立ち返りました。カシオ計算機という社名にあるように、私たちは電子機器メーカーです。電子機器メーカーの象徴ともいえるのが電子基板を用いたモジュールで、機械式ムーブメントを軸とする他の時計ブランドとの違いでもあるわけですが、その肝心のモジュールって基本的に見えないんですよね。年々着実に進化している自慢のパーツにもかかわらず、人目に触れることのない存在であり続けてきて。だから、デザインとして表に出せないかと考えたんです」
──それで、念願が叶ったんですね。
「ただ、そう簡単ではありませんでした。透明な液晶にすることでモジュール基盤を透けて見せられたのですが、デリケートな電子部品ですので、そのままでは実現できませんでした。具体的には光が入ると誤作動を起こしかねない部品があるため、設計士の方と何度も打ち合わせを重ね、配置を変えたりカバーを付けたりして懸念を払拭していったんです。せっかくだからとパーツの一部をゴールドにしたり、アニバーサリーモデルらしい特別な装飾も加えてみました」
上が既存のモジュール。下が「クリア リミックス」で使用されたモジュール。見られることを意識し、やや明るめのカラーを採用した。
──「DWE-5640RX-7JR」のバンドは、上下で異なる素材を用いたのが面白いですね。
「これも分解・再構築して、徹底して検討した結果に生まれた表現です。三つ折れ式中留なのですが、一部に突く棒で留めるための穴も残してあったり。言ってしまえば無駄なデザインかもしれないですけども、“フィロソフィーリボーン”の実現に必要なものだったと考えています」
──八角形ベゼルの「2100」やビッグフェイスの「110」も、これまでにない「クリア」な表現がされていますね。
「『2100』は、このモデルとしてははじめて透明な文字盤に仕上げました。モジュール基盤までは透けていませんけども、これまでみることのできなかった内部の様子を楽しめるようにしています。インデックスと見切り部分も透明にしたのがポイントですね。これも透明にすることで構造が若干変わってくるので、開発はかなり大変でした。『110』も同じくスケルトンの文字盤で、こちらはメタルだったボタンもスケルトンにしたのが特徴です。側面からも光が入ってくるようになってしまうので、それによって内部のモジュール基盤が悪影響を受けないよう対処しています」
──最後に、読者にメッセージをお願いします。
「40周年記念シリーズということで、いろいろと特別なネタを仕込んでいますので、ぜひじっくりご覧いただきたいですね。通常のモデルではない、スペシャルな要素を散りばめていますから。そしてここをひとつの起点として、これからのG-SHOCKにもご注目いただければと思います」
カシオ計算機 お客様相談室
TEL:0120-088925
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この記事を書いた人
ライター横山博之
カバン、時計、ファッションなど男性のライフスタイルを彩るモノを領域とするライター。デザイナーや職人などモノづくりに関わるキーパーソンへのインタビュー経験も豊富。時代の先端を行く技術やカルチャーにも目を向ける。
Website:https://monomax.jp/
お問い合わせ:monomaxofficial@takarajimasha.co.jp
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