常に一歩先をゆく先見性がファンを作る
日本の高級スーパーマーケットという言葉から、多くの人がイメージするのが「紀ノ国屋」だろう。同店は1910年に東京・青山で創業し、日本で初めて、お客がセルフサービスで商品を選びレジで精算するというスーパーマーケット業態を導入した日本のスーパーの草分け的存在だ。今のスーパーには当たり前に存在するショッピングカートも、紀ノ国屋が最初。導入当初はショッピングカートが日本に数台しかなく、米国人向けストアで使用されたものを使っていたそう。
紀ノ国屋の魅力はオリジナリティにある。野菜やフルーツ、肉をはじめ、チーズなどの乳製品からお菓子にいたるすべてが上質なラインナップ。また、PB(プライベートブランド)商品も紀ノ国屋が先駆けだった。
スーパー業界で常に一歩先を歩んでいる紀ノ国屋が、この数年力を入れているのは、PB商品の特別販売会。紀ノ国屋店舗がない地域に自ら出向き、紀ノ国屋のPB商品のよさを知ってもらおうと、全国規模で展開している。お客が店舗に来るスーパーと真逆のことを、日本初のスーパー業態である紀ノ国屋が行っているのがとても興味深い。
人気のPB「紀ノ国屋オリジナル」に迫る! 髙橋副社長インタビュー
今の紀ノ国屋人気を支えているのが、PB「紀ノ国屋オリジナル」。魅力満載のシリーズはどのように誕生したのか、開発のトップに聞いた。
紀ノ国屋 取締役副社長 髙橋一実さん「商品開発はアイドルプロデュース!」
2015年に紀ノ国屋の副社長に就任。以来、一貫してPB商品「紀ノ国屋オリジナル」の開発、マーケティング、営業展開に携わる。
紀ノ国屋オリジナルとは……
<人気No.1> ラー油せんべい ¥398
ピリ辛ラー油と唐辛子がきいた甘辛味のえびせん。2017年の発売以来、人気1位を継続中。
紀ノ国屋が手がけるPB商品ブランド。パンやスイーツをはじめ、スナック菓子、惣菜、調味料など多岐にわたる。また、雑貨も展開しており、エコロジーバッグやジッパーバッグ、消臭スプレーなどもある。現在約1,200種類を展開。
──PBに力を入れ始めたきっかけは何ですか?
髙橋「プライベートブランド(以下、PB)に本格的に力を入れ始めたのは2015年です。当時は紀ノ国屋が新しい旗頭となる商品を模索していた頃でした。そこで目をつけたのが、PB『紀ノ国屋オリジナル』です。当時の紀ノ国屋は20店舗弱。この店舗数は、業界内ではPBの開発はほぼ不可能と思われる数字です。ですが、紀ノ国屋には百年を超える歴史とブランド力があったので、うまくやれば価値を見出せるだろうという確信がありました。
また、魅力的なPBを作り、社員ひとりひとりに『これを売っていこう』という気持ちにさせたいという想いもありました。ありがたいことに、作ったPBは社員が店舗に独自の棚を作るなどして積極的に販売展開を行い、お客様にもご好評をいただきました。PBをきっかけに自社の商品力と販売力が強化されたわけです。言うなれば、紀ノ国屋にとってPBとは、他社との差別化をする武器ではなく、自社を強くするための一つのツールだったんです」
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この記事を書いた人
ライター金山 靖
文房具、家電、インテリア、雑貨などライフスタイル系グッズに精通。商品の企画開発担当者をはじめ、タレントや文化人などへのインタビュー経験も豊富。カップ麺やお菓子などグルメ全般にも造詣が深い。
Website:https://monomax.jp/
お問い合わせ:monomaxofficial@takarajimasha.co.jp
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