今度はメタルで迷彩柄!G-SHOCKの新たな挑戦について担当者を直撃!
2019年も数多くの話題作を生み出したG-SHOCK。中でも大きな注目を集めたのが"迷彩柄メタルG-SHOCK"として登場した「GMW-B5000TCM-1JR」と「MTG-B1000DCM-1AJR」。特に前者はすでに品薄状態になるほどの人気を博しています。
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左)牛山和人さん/カシオ計算機 羽村技術センター 開発本部 時計開発統轄部 商品企画部 第一企画室、右)池津早人さん/カシオ計算機 羽村技術センター 開発本部 時計企画統轄部 第一デザイン企画部 11デザイン室
この画期的なモデルは、どのようにして誕生したのか? 企画を統轄した牛山和人さんと、迷彩パターンのデザインを実現させた池津早人さんに話を聞きました!
実はBABY-Gで培った技術が使われていた!
「開発自体は発売する1年半以上も前から行われていたのですが、2019年後期のテーマに"CMFの進化"を掲げるにあたり、この迷彩モデルが目玉のひとつになると考えました」(牛山さん)
「CMF」とは、Color(色)、 Material(素材)、Finish(仕上げ)のこと。時計の見た目や印象を決定づける外装デザインの核となる3要素です。
G-SHOCKといえばさまざまな革新的機能を備えるブランド。タフなスペック面に興味が向きがちですが、色や素材のバリエーションが豊富な点も見逃せない魅力です。特定のテーマで多モデルを横断するカラーテーマシリーズもたびたび登場していますし、多彩な選択肢をもってユーザーのスタイルに対応しようというのは、まさに多様性社会に望まれる姿勢。「自分らしさ」を大切にするストリートカルチャーに早くから受け入れられてきたのも、納得です。
そしてG-SHOCKのバリエーションは、ただ色を変えただけではないのもミソ。
「特にCMFにこだわった最近の例としては、シリーズ誕生20周年記念モデル『MTG-B1000RB』や『MTG-B1000XBD/B1000XB』があります。前者は、レインボーIPでベゼルを彩り、同じ表情をしたものはひとつとしてない点が特徴です。後者は、通常見せることのないカーボンシートの積層具合をストライプ柄として表現したカーボン積層ベゼルを採用しています。それぞれ設計思想は異なりますが、いずれも新技術に挑戦し、新たなデザインとして昇華したものです」(牛山さん)
CMFに特に注力していたデザイナーのひとりだったのが、池津さん。実はG-SHOCKのデザインを担当し始めたのはここ数年で、それまではBABY-Gを担当していたとのこと。
「女性向けであるBABY-Gは、見た目の加工やあしらいにこだわる傾向が強く、さまざまな加飾技術を手掛けることができました」(池津さん)
メタルの質感を残せるドットパターンで迷彩を表現!
そんな池津さんが「G-SHOCKでやってみたいな」と考えたのが、レーザー加工を使った表現。BABY-Gでは、透明な樹脂製文字板にレーザー加工によって凹凸をつけ、独自のテクスチャーを表現したことも。
「レーザー加工は裏蓋へのロゴの刻印などで使われている技術ですが、まだまだ可能性は大きく、なんらかの柄を表現できるのではないかと思ったのです」(池津さん)
そこで考えられたのが、迷彩柄。
ミリタリーな迷彩柄とG-SHOCKの親和性は高く、これまでも多数の活用例はありました。しかしそれらは、樹脂製のケースや文字板に印刷したものばかり。
「レーザー加工で迷彩柄を表現した例はありませんでした。この技術のメリットを活かそうとし、思い至ったのがメタル素材での迷彩柄の表現です。メタルに印刷する方法は、使用するうちに一部が剥げてしまう恐れがあるのですが、レーザーで直接彫ってしまえばそのようなことはありません」(池津さん)
ベースモデルとして採用されたのは、G-SHOCKの原点ともいえる「5000」とミッドサイズのMT-Gの2本。いずれも抜群の人気を誇っており、ブランドの顔としてカタログのトップページに並んでいたほどです。
こちらが最初期に作成されたラフスケッチ。左がフルメタル仕様、中がメタルケース×樹脂バンド仕様、右が同様にメタルケース×樹脂バンド仕様で、色をネイビーにしたもの。関係者間でのインプレッションをリサーチし、話を煮詰めた後、左のフルメタル仕様に採用が決定しました。
「新聞紙の写真を印刷するように複数のドットで迷彩柄を表現することにしました。広範囲に彫ってしまうと下地が出すぎて、メタルらしいツヤ感が損なわれてしまうからです」(池津さん)
こちらは試作機。
やってみたものの、最初はドットのラインが揃わなかったり彫り方が不均一だったりと、うまくはいかなかったそう。
配慮を行き届かせたディテールがスゴイ!
試行錯誤の末、完成形ではこのように美しい柄表現を実現。コマのラインにピッタリと並んだドットや、均整の取れたドットサイズが見て取れます。
サイドビューもこのとおり。
こちらは「MTG-B1000DCM-1AJR」。バンドの取付部やカン足など、細かな部分にもしっかりドット柄が刻まれています。
拡大してみたのがコチラ。細かな加工の積み重ねでできているのがわかります。
「GMW-B5000TCM-1JR」の場合、文字板の外周部にも同じようなドット柄が。これは印刷による加工で、レーザー加工によるケースと違和感なく連続して見えるのも、実はかなりスゴい点。
「その他にも細かな話ですが、ケースとバンド、MT-Gではさらにカン足で別のレーザー加工機を使用しており、異なる環境ながら最終的な仕上がりを統一するのに苦労しました。データ上で同じ設定にしても、実際に作業を進めるとドットのサイズ感や色味にバラツキがでてしまうのです。何度も微調整を繰り返しました」(池津さん)
さらには、バンドにも趣向を凝らしたとのこと。コマにもドットで迷彩柄が表現されているのですが、この「アジャストコマ」と呼ばれる部分、実はたった2つのパターンで構成されているんです。腕の太さに応じてコマ数を変えることになるため。さらにはコマの順番を入れ替えても違和感がないよう、考えつくされた迷彩柄を選択。こうした細やかな配慮にも驚かされます。
レーザー加工によるCMFにこれからも期待!
こうして完成した迷彩柄モデルに、開発を担った2人も満足しているご様子。
「レーザー加工によるメタル素材への迷彩柄表現は、これまで誰もやったことがなく、盲点でした。一部では池津くんのことを『Mr.CMF』と呼んでいるのですが、多彩な加飾技術を磨いてきた彼だからこそ実現できたと思っています」(牛山さん)
「完成に至れてホッとしています。まだまだ大きな可能性を秘めていますから、今後もレーザー加工を生かしたモデルを生み出していきたいですね」
既存の技術を駆使して、見たことのない世界を作り上げたG-SHOCKの新作モデル。今後の展開にも期待です!
G-SHOCK「GMW-B5000TCM-1JR」¥175,000(税抜)
●ケースサイズ (H×W×D): 49.3×43.2×13mm●質量: 110g●耐衝撃構造●20気圧防水●ワンプッシュ三つ折れ式中留●タフソーラー●電波受信機能●モバイルリンク機能●ワールドタイム5本:世界39都市+UTCの時刻表示、ホームタイムの時刻入替機能付き●ストップウオッチ●タイマー●時刻アラーム5本・時報●バッテリー充電警告機能●パワーセービング機能●フルオートカレンダー●12/24時間制表示切替●操作音ON/OFF切替機能●日付表示●曜日表示●LEDバックライト
G-SHOCK「MTG-B1000DCM-1AJR」¥145,000(税抜)
●ケースサイズ (H×W×D): 55.8×51.7×14.4mm●質量: 182g●トリプルGレジスト●20気圧防水●ケース・ベゼル材質: ステンレススチール/樹脂●無垢バンド●ワンプッシュ三つ折れ式中留●レイヤーコンポジットバンド●タフソーラー●電波受信機能●モバイルリンク機能●針位置自動補正機能●ワールドタイム:世界27都市+UTCの時刻表示、ホームタイムの都市入替機能●ストップウオッチ●タイマー●時刻アラーム●バッテリーインジケーター表示●パワーセービング機能●日付・曜日表示●フルオートカレンダー●LEDライト
カシオ計算機 お客様相談室
03-5334-4869
http://g-shock.jp/
取材・文・写真/横山博之
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