藤野社長の一声でHondaJetが飛んだ!? G-SHOCKグラビティマスター特別コラボの開発秘話を聞いてきた!
G-SHOCKの中で、HondaJetが航行している!?
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2020年7月、G-SHOCK×HondaJetの特別コラボとして発売された「グラビティマスター GWR-B1000HJ-1AJR」。「新しい挑戦の連続だった」という開発秘話をインタビューしてきました!
今回のコラボ実現のカギとなったのが、この3名。左から、プロモーション担当の岩元一志さん、デザイナーの山本圭四郎さん、企画担当の牛山和人さん。
双方のファンから熱視線が注がれる注目の両巨頭!
開発の経緯を紐解く前に、ベースモデル「グラビティマスター GWR-B1000」のおさらいから。
特定の環境下における優れたタフネスを提供する「マスター・オブ・Gシリーズ」の中で、衝撃力・遠心重力・振動の重力加速度に 耐えるトリプルGレジストなど、"空"の領域における有用性を発揮したのが「グラビティマスター」です。その最新バージョンが、2019年3月に発売された「GWR-B1000」。耐衝撃性・剛性・耐劣化性に優れたカーボン素材を採用し、G-SHOCKではじめてケースと裏蓋を一体化させた「カーボンモノコックケース」を採用したことでも大きな話題になりました。ドイツのiFデザイン賞2020も受賞しています。
このカーボン素材は、G-SHOCKが「第3の素材」としてブランドを挙げて注力するもの。そのため、「GWR-B1000」はグラビティマスターの最新作というだけでなく、G-SHOCK全体におけるフラッグシップモデルという位置づけになっています。今回の「GWR-B1000HJ-1AJR」はその初のコラボモデルなので、相当注目されているんです。
コラボ相手のHondaJetは、あの世界のホンダの米国子会社であるホンダ エアクラフト カンパニーが生み出した小型ビジネスジェット機。社長兼CEOは、創業者・本田宗一郎のホンダイズムを継承する藤野道格氏で、藤野氏自らが研究開発やデザインも指揮しています。主翼上面のエンジン配置や自然層流翼型、一体成型複合材胴体といった独自技術によって、最高速度・最大運用高度・上昇性能・燃費性能・静粛性などクラス最高水準のスペックを実現。航空機の新しい形態を切り拓いたと、数多くの賞を受賞しています。小型ジェット機カテゴリーにおける出荷数は同機の代名詞的存在だったあのセスナを抜き、2017年から3年連続で世界一を達成しているほどです。
空への熱い想いを秘めたG-SHOCK「グラビティマスター」とHondaJetによるランデブー。「GWR-B1000HJ-1AJR」は、時計ファンだけでなく航空機ファンからも熱視線が注がれているんです。
「クリエイティブをぶつけ合った」 いま明かされる開発秘話!
さっそく、みなさんに開発秘話を伺いました!
岩元「2018年に新グラビティマスターの企画が立ち上がると同時に、航空コンセプトに合うコラボをできないかと考えていました。そこでひらめいたのが、HondaJet。ただの特別カラーで終わらせるのでなく、深いところからアイデアを突き合わせられるのではと予感したんです」
以前からテレビや雑誌を通し、HondaJetの凄さや藤野道格氏が持つクリエイティビティの高さに注目していたという岩元さん。ただ、これまで一切の接点がない相手……岩元さんが取った行動は、公式ウェブサイトにある「お客様問い合わせ窓口」からのメール投稿でした。
岩元「どうコンタクトしていいかわからなかったんで……(笑)。しかも、HondaJetを作っているのがホンダ エアクラフト カンパニーであることを知らず、別会社である本田技研工業にメールしていたんです。でもありがたいことに、そこから話をつないでもらえました」
2018年11月より、先方との話し合いがスタート。まもなく藤野社長も交渉に参加し、コラボを行う方向で話が進みます。
牛山「日本法人がアメリカで航空機の認可を取ったというものすごい快挙を達成した理由の一つが、厳密な検査体制を敷いている点でしょう。人命を扱う航空機にはクリアすべき多くの試験があり、HondaJetはすべてを高水準でクリアされています。G-SHOCKも各種の耐久テストを実施していて、『タフネスを追求する』という姿勢に共通点があったこともコラボが実現したきっかけになったと思います」
2019年2月下旬に開催された新作展示会では、今作のベースとなる「GWR-B1000」がお披露目されました。実はこのとき、設置されたイメージビジュアルにHondaJetの姿がすでに描かれていたのだとか。コラボの伏線だったわけです。
そしてメールの往復で方向性が定まった後の2019年3月、岩元さんと牛山さんはアメリカノースカロライナ州のホンダ エアクラフト カンパニー本社へ。フライトの遅れもあり、2泊4日の過酷な旅程だったそうですが、藤野社長に直接グラビティマスターのプレゼンとデザインの提案を行えたのだそう。
山本「これがその3案で。構造試験室にある鉄骨をイメージしたブルー、カーボンとプライマーの色が混在する組立工程をイメージしたグリーンも用意しましたが、本命はやはり機体そのものをイメージしたホワイトでした。藤野社長からも、これでいこうと了承をいただきました……が、それで終わりという単純な話ではなかったんです」
こちらが、その藤野社長。
藤野社長はHondaJetの機体開発のみならず、製造ドックの設計や工具の保管場所、機体受け渡し場所のインテリアや受け渡しの演出方法、果てはオフィスに置く植栽の位置まで、ありとあらゆるモノに目を行き届かせているという"天才"(現地で見聞きした岩元さん談)。当然このコラボにも妥協は一切なく、帰国後のデザインの追い込みは何度も行われることに。
山本「スケッチ画の余白にびっしりと文字が書き込まれているんです。『この部分、こうはできませんか?』と。お忙しい身でしょうに、ここまで前のめりで取り組んでもらえるなんて……と感動しました。クリエイティブをぶつけながら、いいものを作っていこうという感覚が強く、僕としても大きなやりがいを感じた時間でしたね」
牛山「こちらからもアイデアを出しますし、藤野社長からも多くのアイデアをいただきました。インジケーターをHondaJetのシルエットにしたのもそう。また、ねじ込み式リューズのトップにHondaJetのロゴを入れたのですが、締めたときにいつも正しい位置に来るよう内部構造も作り直しました。ここまで手間を掛けるのは、コラボモデルでもそうそうありません。でも、こっちもアメリカの現地で生のHondaJetを見て、いつも以上に熱量が増しちゃっていましたから(笑)」
メールの往復でアイデアを煮詰め、2019年7月には試作品をチェック。企画のスタートからおよそ1年の月日を経て、完成へと至りました。
岩元「お互いに妥協することなく、理想の1本が出来上がったと思います!」
コラボだからこそ!開発者が力説するこだわりポイント!
HondaJetとのコラボだからこそ実現した、こだわりのポイントをみていきましょう。
異形インジケーター
最大のポイントが、12時のインジケーターに使われている針に、HondaJetのシルエットを採用した点です。藤野社長自らが発案&デザインしたもので、同機を象徴する主翼上面エンジンもしっかり見て取れます。
山本「ちょっと衝撃を受けたアイデアでしたね。こちらから提案した当初のラフ案にも、通常の三角形のタイプしか描いていませんでしたから」
牛山「グラビティマスターに求められる耐久性能と、ダイヤル下に設置したソーラーパネルに十分な光を届けられる面積を確保できるよう微調整を繰り返し、この異形インジケーターを実現させることができました」
アイスブルーのインダイヤルリング
HondaJetの機体に塗装されているのと同じアイスブルーカラーをインダイヤルリングに表現。
山本「この色を出すの、めちゃくちゃ大変だったんです。樹脂素材に金属を蒸着させてメタリックな質感にしているのですが、この絶妙な色合いを出すのに苦労して……材料の配合から下地の色、素材の凹凸といった多くの要素が絡むんです。実際に機体のサンプルを送ってもらい、試行錯誤してそれに合わせました」
牛山「特に今回は、ただ『いい感じの色合い』ではダメで、『HondaJetの機体カラーと同じ』でなければいけなかったから余計に大変でしたね」
美しい白文字盤
文字盤には白を採用。G-SHOCKとHondaJet双方のロゴマークも刻まれています。
山本「最終案手前まで、機体と同じアイスブルーを文字盤に起用する案もありました。しかし、それだと高級感を出すのが難しく、同じく機体の一部に使われている白色を採用しました。ポイントは、高い白色度。たいていのソーラーモデルの場合、光を透過させる必要があることからどこかくすんでしまうんです。しかし、省電力設計を徹底した今作は2つのインダイヤルからの受光だけでカバーできるため、文字盤にはきりっとした白を表現できたんです」
エンジンをイメージしたリューズ&ボタンパイプ
ケース右に並んだリューズ&ボタンにも、コラボならではのアレンジが。リューズ側面の加工をローレットからスパイラルに、ボタンパイプの仕上げをヘアラインからミラーへと変更しています。
牛山「現地で視察した際、特にエンジン周りのデザインに惚れてしまって。それでエンジンのフィンをリューズ側面の切削で表現しました。シャープすぎて衣服を傷めないよう、また太すぎてもたついて見えないよう、バランスに苦労した部分です。一つ一つ手間を掛けていて、かなりリッチな仕様なんですよ。またエンジンキャップのミラー仕上げの美しさにも感動して、ボタンパイプに採用しました」
いつも正面を向くリューズトップのブランドロゴ
ねじ込み式のリューズトップには、HondaJetのロゴマークを刻印。何の変哲もないディテールに思えますが、実は意外な工夫が……。
牛山「一般にこの手のパーツは、ねじ込みが止まる場所を想定せずに作っているため、締めたときにロゴがどの方向を向くかわかりません。しかし、せっかくならバシッとキマるように見せたい。そのために内部の作りをいじり、常にロゴマークが正面を向く位置で締まるよう独自機構に変えました」
高度な成形技術を要する積層ベゼル構造を採用
ベゼル正面でカーボンの織柄を見せているのはベースモデルと同様ですが、サイドはストライプを表現。実はこれ、塗装ではなく色の異なるカーボンシートを積層し、そのまま成形することで縞模様を表した特別な仕様なんです。
牛山「以前のバーゼルスペシャルモデルでも使ったアイデアですが、今作も特別感を高めるために採用しました。黒と白の積層をキレイに表現しています」
HondaJetが誇るクラス最高峰のスペックを印字
バンドには、次の通りHondaJetが誇るクラス最高の飛行性能を印字しています。
- MCS(Maximum Cruising Speed/最大巡航速度):422KTAS(Knots True Airspeed/真対気速度)
- MOA(Maximum Operating Altitude/最大運用高度):43000フィート
- RANGE(航続距離):1437nm(nautical mile/海里、約2661km)
岩元「バンド上になにかしらのデザインがほしく、当初はグラビティマスターの性能表記を印字する案でした。しかし藤野社長とのやりとりでHondaJetのスペックを表記したほうが雰囲気が高まるということになり、このデザインに落ち着きました」
カーボン調の特製ボックス
同梱するボックスには、綾織りされたカーボンを彷彿とさせるデザインを表現。
岩元「求めたのは、タフでありラグジー。デザインのキーとなったカーボンらしさを全面に出しつつ、高級感も漂うものにしました。HondaJetの機体に使われているアイスブルーもアクセントにしています」
なお、HondaJetの藤野社長にもお話を伺うことができました。以下の記事からチェックしてみてください!
「G-SHOCKとのコラボは日本人としての誇り」HondaJetの藤野社長に直撃取材!
G-SHOCK「グラビティマスター GWR-B1000HJ-1AJR」¥115,000(税抜)
●ケースサイズ (H×W×D): 50.1×46.4×16.9mm●質量: 72g●カーボンベゼル●防錆構造●トリプルGレジスト●カーボンコアガード構造●球面・曲面ガラス●内面無反射コーティングサファイアガラス●ねじロック式リューズ●ネオブライト●20気圧防水●ケース・ベゼル材質: カーボン●カーボンファイバーインサートバンド●タフソーラー●電波受信機能:自動受信/手動受信●モバイルリンク機能●針位置自動補正機能●デュアルタイム●ストップウオッチ●タイマー●時刻アラーム●バッテリーインジケーター表示●パワーセービング機能●日付・曜日表示●フルオートカレンダー●LEDライト
G-SHOCKとHondaJet、それぞれのクリエイティビティがぶつかり合って完成した特別なグラビティマスター。大空に思い描いた、大人の男たちの夢が宿っています。
カシオ計算機 お客様相談室
03-5334-4869
http://g-shock.jp/
取材・文・撮影/横山博之 写真提供/カシオ計算機
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