イギリスに惹かれて45年 、ツウが語る英国モノの魅力とは。
ファッションから日用品まで、英国モノにタイムレスな魅力を感じている人も多いだろう。そこで生粋のイギリス好きであるマサキさんに、英国モノの真の魅力を伺った。
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British Equipment Publishing代表
マサキさん
1964年生まれ。大学で広告論を研究後、英国に遊学。それ以降も年に2回のペースで渡英し、10年前にはイギリスの古着や雑貨を扱うライフスタイルショップをオープン。現在は渋谷と恵比寿に業態の異なる店を構えている。
「イギリスこそ我が人生 好きだからこそ伝えたい」
英国モノ好きの男性は多いが、そのほとんどはファッションや車、お酒といった特定のジャンルに限定されているのではないだろうか。もちろんそれも英国モノ好きには変わらないし、ひとつのジャンルをとことん極めるのは潔くて格好良いものである。だが、今回お話を伺った、ブリティッシュ イクイップメント パブリッシング代表のマサキさんは違う。洋服やサングラスといった身にまとうモノから車、カトラリーや皿などの日用品に至るまで、とことんイギリス製にこだわっているのだ。そして何より、マサキさんの生き方や人生そのものがイギリスであり、ロックなのである。
「ビートルズとの出会いがすべての始まり」
そもそもマサキさんがイギリスに魅了されるきっかけとなったのは、11歳の頃に出会ったビートルズだ。
「ビートルズの『ア・デイ・イン・ザ・ライフ』という曲があるのですが、その歌詞にすごく惹かれたんです。“ランカシャーの穴”って何? “アルバートホール”?って、歌詞に出てくる言葉が何のことを言っているのか全然わからなくて。それらの意味を知りたい、探求したいと強く思ったところからスタートしました」
年齢を重ねるごとにイギリスへの探究心がさらに高まっていき、10年前にブリティッシュ イクイップメント トレーディング、4年前にブリティッシュ イクイップメント パブリッシングをオープン。実はマサキさんは、イギリスやファッションとは全く関係のない機械製作の仕事を本業としている。それでいて店を始めたのはなぜなのか。
「41歳まではよかったんですが、42歳があまりいい年ではなくて。これから自分は死んでいくだけなんだと感じるようになりました。と、同時になにか残していかないといけないという熱い想いも湧いてきたんです。そう考えたときに私にできることは、ただひとつ。今まで学んできたイギリスの格好良さやモノや音楽、車などの知識を若い世代へ伝えていくこと。そこで46歳のときに本業を半分隠居して、古着や雑貨といった英国モノを集めた店を始めました。イギリスもそうですが、店も私の趣味のひとつなんですよ」
(グラス)店で使用しているグラスは、すべてロイヤルドルトンのクリスタルなど。イギリスのお酒をイギリスのグラスで提供するのがマサキさんのこだわり。(椅子)カウンターにずらりと並べられた椅子は、イギリスで購入して自ら持ち帰ったもの。エバータウト社の40年代の作業用のものをはじめ、歴史を感じさせる年代モノの椅子ばかりだ。
「質実剛健な作りはイギリス人の性格そのもの」
マサキさんが初めて渡英した時に驚いたのが、想像以上にイギリス人がケチで真面目であることだったという。
「イギリス人に対して、英国王室のような気高いイメージを持っている日本人は多いと思います。私もその一人だったのですが、実際に行ってみると全然そんなことはなくて、すごくケチで真面目。ケチというのは悪い意味ではなく、イギリス人は直しながら、ときにアップサイクルして、あらゆるモノを長く大切に使っていたんです。それができるのは真面目にモノを作っているからこそだと思うんです。例えば車。私は今まで他国の車もいろいろ乗ってきたし、整備してきましたが、イギリス車は直せるし一番真っ当なんですよね。もちろん洋服や靴、日用品などにもいえることで、車の組み方にしてもデザインにしても無駄がない。真面目さはモノやパーツからも伝わるし、こっちもそれを真面目に受け取らないといけないと思いました。そうしないとイギリスに失礼でしょ? 」
考えてみれば、イギリスには何百年も続く老舗ブランドが数多く存在する。真面目にモノを作っているからこそ長く続いているのだが、それだけではないとマサキさんは考える。
「ただ単に真面目だからといってブランドが長く続くわけではないと思います。こうすればもっと良くなる、格好良くなるって、時代に合わせて柔軟に更新していくことも必要。例えば今日履いているサンダースのサイドゴアブーツ。私が別注したモデルなのですが、一見するとサンダースっぽくないのはちゃんとアップデートされているから。それは音楽も同じで、私はロックからヒップホップまで英国音楽だったらなんでも聴きます。新しく知るジャンルが増えていくのも面白いし、私自身も更新していかないと」
マサキさんが愛用する英国モノ
(グローブ)ディープネイビーで別注したデンツのフィンガーレスグローブ。運転していると汗を掻くため、3組ほど車に積んでいるそう。(ベルト)セジウィック社のレザーを使用したベルトは、イギリスの職人にオーダーしたもの。刻印したサイズ表記がデザインのポイントに。
マサキさんはファッションやカルチャーだけでなく、イギリス製のネジや水道の構造などニッチな部分について知ることも当たり前だと考える。その絶え間なく続くイギリスへの探究心はどこから生まれてくるのだろう。
「イギリスという山はすごく高いから楽しいし、どんどん登りたいと思わせてくれるんです。だから死ぬまでブレずにイギリスだけを勉強していきたい。私は“腐っても鯛、腐ってもイギリス製”と喩えるのですが、アイテム問わず英国モノの本当の魅力はそこにある。真面目に作っているから長く愛用できるし、使っていくうちに生まれる傷も味になってくれる。もし壊れたら直すこともできるし、アップサイクルしてもいい。だから自分にとって最高の英国モノを手に入れて、プライドを持って一生愛してほしいですね」
British Equipment Publishing ブリティッシュ イクイップメント パブリッシング
45年かけて集めてきた様々な英国コレクションに囲まれながら、スコッチやジンといったイギリスのお酒が楽しめるバー。マサキさんが手作りするスープやケーキも絶品だ。
住所 東京都渋谷区東3-15-7 ヒューリック恵比寿ビル1F
TEL 03-6419-7620
営業時間 14:00〜24:00
定休日 木曜、第2・第4水曜
撮影/大村聡志 取材・文/近間恭子
MonoMaster4月号より転載(英国モノを特集したMonoMaster4月号のご購入はこちらから)
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