性教育のやり方がわからない保護者のために開発
「ここからかるた」を開発した染矢明日香さんに話を聞いた。
NPO法人ピルコン 理事長
染矢明日香さん
――開発のきっかけは?
「保護者の方向けの性教育講演をするなかで、『性教育が大切なのはわかるけど、きっかけがつかめない、どう話しはじめていいかわからない』という声を聞きました。そんなとき、当時4歳だった私の子どもが保育園で遊んでいるかるたのフレーズを家でも楽しそうに繰り返しているのを目にし、『かるた』は幼少期に遊びながら性教育を学べるツールとしてぴったりなのでは、とひらめいたんです」
――性教育をかるたのフォーマットにきれいに落とし込んでいるのがすごいですね。
「かるたの文字数や最初の文字にあわせて、子どもにも理解できる表現をするのはとてもチャレンジングでした。専門家の方や自分の子どもからもアドバイスをもらい、改良を重ねて開発しました」
幅広い子どもたち・若者たちが性を学ぶツールとして活用していきたい
――どうして5歳に設定したんですか?
「健康教育の国際スタンダードであるユネスコの『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』では、5歳から8歳の年齢層のうちに性教育を行うべきという学習目標が定められています。また、未就学の子どもたちにむけて、性についてネガティブなイメージがつく前に、安心して学んでもらいたいと思い、5歳以上という年齢設定にしました」
――他の性教育グッズとくらべて、「ここからかるた」の長所はどんなところにあると思いますか?
「私はこれまで、アメリカの性教育関連のアニメ動画を翻訳したり、絵本を紹介したりしてきました。ですが、もっと日常の遊びを通して、こころ、からだ、人との関係、人権について幅広く学べる教材ができないかと考えていました。「ここからかるた」はまさに簡単で楽しい遊びを通して学べる教材になったと思います。
また、かるたの裏には、札の内容に関連する話題が自然とできるよう、トークテーマや補足をつけて、更に話題を広げて話しやすくする工夫をしました。 かるたの絵と言葉でイメージが強化されるので、『かるたでこんな絵や言葉があったよね』と子どもが覚えてくれることも多いようです」
――今後、「ここからかるた」をどのようにしていきたいですか?
「やはり、今よりさらに活用の幅を広げられたらと思っています。先日、クラウドファンディングで、希望する児童養護施設や子ども食堂、ひとり親支援団体に『ここからかるた』を提供するプロジェクトに挑戦し、全国約30施設に提供させていただきました。このように、様々なハードルを抱える子どもたちに安心できる性の学びを届けられたらと思います。また、障がいのある子どもや若者たちが性を学ぶツールとしても活用できないかと思っています。一般の方向けにも『ここからかるた』を活用した親子向けワークショップなども開催していきたいと考えています」
『はじめてまなぶこころ・からだ・性のだいじ ここからかるた』
¥4,180(税込)
【考案】染矢明日香
【監修】艮香織
【デザイン】北山瑠美
【イラスト】ハラペコ遠藤
ISBNコード:978-4-7726-5504-0
お問い合わせ先:合同出版
https://www.godo-shuppan.co.jp/book/b605656.html
【今回のまとめ】
性教育関連のアイテムは、伝えなければならないことをオブラートに包み、飲み込みやすくするものが多いが、包み具合がとても難しい。オブラートが薄すぎると気恥ずかしさにつながりかねないし、厚すぎると伝わらない。
その点、かるた遊びを通して性教育の知識を得られる「ここからかるた」は、具体性と親しみやすいデザインのバランスが絶妙。5歳という対象年齢も世界的なスタンダードなので安心して子どもと楽しめるはずだ。
この記事のタグ
この記事を書いた人
ライター金山 靖
文房具、家電、インテリア、雑貨などライフスタイル系グッズに精通。商品の企画開発担当者をはじめ、タレントや文化人などへのインタビュー経験も豊富。カップ麺やお菓子などグルメ全般にも造詣が深い。
Twitter:@kuunelu5963
Website:https://monomax.jp/
お問い合わせ:monomaxofficial@takarajimasha.co.jp
モノマックスの記事をシェアする