乳首を透けさせない! ある男の探究心が生んだ「正装白T」開発秘話!
"ないもの"とされてきた乳首透け問題に挑む!
男にとって永遠の定番ともいえる、白T。デニムと合わせたカジュアルスタイルだけでなく、オンシーンのジャケパンスタイルにも重宝するアイテムですが、こんな不安が頭を過ぎったことはないでしょうか?
「あれ、これ乳首透けてない……?」
「魔性の魅力を持ったライトアウター」高級感◎でカッコ良すぎる…“ザ・ノース・フェイスの大人なブルゾン”をスタイリストが徹底解説
そんなことを誰しも一度は懸念しながら、
「気のせい、気のせい」
「大丈夫、そういうもんだから誰も気にしない(はず)」
と、なかったことにしてきたこの問題に、真剣に取り組んだ商品が登場しました。
それが「正装白T」がそれです。
その名の通り、正装時に着用する白Tを目指したこの商品。
厚手のオーガニックコットンを採用することで、ビジネスシーンにふさわしいフォーマル感を表現。そして乳首が透けないので、「今日は乳首、大丈夫かな……」という不安を払拭できます。
リリース文に「乳首、乳首」と単語が連呼されているのも、メンズアパレル商品としてはかなり異質の製品です。
多くの人々に認知されていながらも、乳首透け問題というファッション業界のタブー(?)に真っ向勝負を挑んだ開発者の川辺洋平さんに、話を聞きました。
乳首の透け具合をテスト!
「まずは着てみますか?」
透過度はいかほどか? ということで、さっそく着用テストしてみました。乳首とその周辺の色をカラーピッカーで抽出しています。
まずはそこらの量販店で買ってきた、綿100%の白T。着用した本人からだと距離が近いからか、「透けて……いる?」と懸念する程度。しかし離れてみれば、「もろ透け」とはいわないまでも、どこに乳首があるのかは百発百中レベルです。
次は正装白T。はい、どこに乳首があるのか、全然わかりません。
「いろいろテストした結果、ウガンダ、インド、メキシコの3つのエリアで採取されたオーガニックコットンをミックスさせ、強く撚り合わせた強撚糸を使っています。ただ、編み方はキツしないことでTシャツに求められる通気性を確保。ですから、編み目の大きさは一般の白Tに近いのですが、強撚糸の糸自体が太いため乳首を透けさせません」
前途多難な開発の日々……奥様の支えが励みに!
広告代理店から独立・起業した川辺さんは、これまで培ってきたアイデアを実現させるスキルを活かし、自身の手による製品開発を2年前に企画。そこで思いついたのが、この乳首透け問題でした。
「カジュアルな厚手モノは別ですけど、ビジネスシーンに合うような白Tは、どうしても乳首が透けちゃうってことを散々体験しまして。フェイスブック上で友人らにこのことを聞いてみたら反響が大きく、ないなら作ってみようか!ということになったんです」
上品さを保ったまま、ただ厚手にすればいいのでは? そんなふうに考えていた川辺さんは、出だしから壁にぶち当たります。縫製工場に電話して回っても、誰も相手にしてくれなかったのです。
「そのときは、ただ厚手にすればいいのでは?と甘く考えていたのですが、色いい返事はまったくなくて。『変な人なのかな?』と思われたかなーという反応もありました。『乳首が、乳首が』と熱心に話していましたから、仕方ないかもしれません(笑)」
それでも諦めなかった川辺さんは、勉強のためにと講座に参加した日本オーガニックコットン協会の人から、「紡績や縫製から学んでみては?」と勧められました。川辺さんはまったくの素人でしたが、そこから棉花農家や紡績工場を訪問したりと、白T作りを一から学んでいくことに。追い求めていた答えがおぼろげに見えるようになり、試行錯誤を繰り返しました。
「何度こうして、生地を乳首に当ててみたことか……。チェックしてもらったのは、僕の妻でした。『ダメ、見えている』『本当にできるの?』と叱咤激励されながらも、最後には満足のいく生地を作ることができました。僕の乳首を何度も見てくれた妻には、本当に感謝しています」
わずか30分で初回生産分が完売!
そして正装白Tは3月14日よりオンライン販売を開始。初回生産分は、販売スタートからわずか30分で完売してしまうほどでした。生産環境を整え、今後の再販売を前向きに検討しているといいます。
「金儲けが目的ではなく、自分が培ってきたノウハウを活かした挑戦的な企画ではありましたが、数少ない日本の棉花農家や紡績工場などを回っているうちに日本のモノ作りのすごさを広めたい、という気持ちも高まりました。正装白Tの原料は海外ですが、縫製はメイド・イン・ジャパンで、乳首が透けないだけじゃなく、着心地も快適なんです。また、僕みたいなアパレル素人でもここまでできるんだってことを伝えたい。誰だって、探究心があれば商品を作れる時代なのだと思います」
乳首透け問題を解決した白Tは、フォーマルシーンでの活用の幅を広げました。もし、この課題をもっと多くのアパレルブランドと共有できれば、「正装時の白T」はさらに流行し、新たなカルチャーとして根付くかもしれません。
ちなみに川辺さんは、次の企画も構想中とのこと。
「仕事で穿けるデニムがほしくて、この前、産地の児島に行ってきたんですよ……」
川辺さんの課題解決の旅は、まだまだ続きそうです。
取材・文/横山博之
この記事のタグ
モノマックスの記事をシェアする