まったく別の研究課題がメタリック表現を実現させた!
では、どうやってブレークスルーを果たせのか? 解決策は意外な方向からやってきたと、設計を担当した安田さんは振り返ります。
安田「メタリックな表現とはまた別の開発目標として、シリコーン素材の活用を検討していました。シリコーンは柔軟で腕馴染みもよく、バンド素材として優秀である一方、摩耗に弱いためG-SHOCK基準には適合しなかったんです。何年にもわたってシリコーンを得意とするパートナー企業と研究を重ねていった末に、表面にウレタンシートを貼り付ければシリコーンの弱点をカバーできるのでは?というアイデアが生まれました。簡単な話ではないんですが、開発を進めることで実現を果たし、G-SHOCKで使えるシリコーン製バンド、すなわち『タフシリコーンバンド』が完成するに至ったんです」
念願叶って実現した、G-SHOCK用シリコーン製バンド。それだけでも開発者の間では「すげー!」という声が上がったそうですが、すぐにさらなるアイデアが……。
安田「シリコーンバンドを表側で保護するウレタンシートは、透明なんですね。なので、その間に別の薄膜を重ねれば、華飾表現ができるのでないか?と思いついたんです。メタリック蒸着を入れてみたところ、うまく成功しました。以前のプロトタイプのように蒸着面が表に出ておらず、ウレタンシートで保護されているので、剥がれる心配もないんです」
表面のウレタンシートは、G-SHOCK基準を満たす耐摩耗性を維持しつつ、シリコーンの装着感を損なわせないよう極限まで薄くしているのだとか。バンドを真横から見ると半分近くウレタンが覆っているように見えますが、それは側面まで摩耗からカバーしようという設計上の意図のため。極薄&透明のため、メタリック蒸着による輝きにも影響を与えていません。
安田「通常の利用でウレタンシートが摩耗されることは考えられず、蒸着面が損傷することもないと考えています。遊環やバックルにはメタル素材を使っていますが、それらが擦れてもまったく問題ありません」
齊藤「シリコーンもシリコーンで、ずっと開発し続けてきましたから。ウレタンシートの活用で、バンドのメタリック表現という難題もクリアできてしまったわけなんです」
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この記事を書いた人
ライター横山博之
カバン、時計、ファッションなど男性のライフスタイルを彩るモノを領域とするライター。デザイナーや職人などモノづくりに関わるキーパーソンへのインタビュー経験も豊富。時代の先端を行く技術やカルチャーにも目を向ける。
Website:https://monomax.jp/
お問い合わせ:monomaxofficial@takarajimasha.co.jp
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