ここを見ろ!偽物G-SHOCKを見破る3原則とは?
かつてないタフさや先進的デザインで、世界中から愛されているG-SHOCK。誕生から35周年を迎え、その人気ぶりはいっそう高まり続けていますが、その裏でとあるトラブルも増えていて……。
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それ、ほんとにタフ!? G-SHOCK人気がもたらす影とは!
G-SHOCKのブランドカラーであるブラックをベースに、いやらしいほどギラギラとしたゴールドを組み合わせたこちらのモデル。
あえて平滑でなくした?文字盤は光を乱反射させ、強烈な印象を与えるもの。
印象的な6時位置のボタンも、ざらつきのある質感に。
なんといっても特徴なのは、カーボンファイバーをインサートさせたように思わせる、このベルト。1987年と、G-SHOCKが誕生した年を刻印して……ん?……G-SHOCK誕生はファミコンと同じ1983年だったはず……。
すみません、これ偽物です!
本物は、写真右の「DW-6930D-1JR」。30周年記念として、2013年に発売されたモデルです。
本物の文字盤は平滑で美しい鏡面仕上げが施されています。偽物もそれっぽく作られていますが、実は三つ目の液晶はただ点滅を繰り返すだけの飾りでしかありませんでした……。
比べてみれば、ボタン部分の出来も一目瞭然。偽物は表面がガタガタですし、色埋めもムラがあります。
極めつけはバンドでしょう。強靭性を増した「カーボンファイバーインサートバンド」は、G-SHOCKが誇る先進技術の一つですが、偽物は再現を諦めたのか、プリントで済ませるという投げやりさ。G-SHOCK誕生年を間違えてみせたのも、詰めが甘いのかなんなのか。
そう、世界中で愛されている一方、G-SHOCKには多くの模造品、偽物が出回ってしまっているという現状があるんです。
品質保証担当者に偽物のダメっぷりを聞いた!
確かにアジア各国を旅行していると、モノでごった返した商店街やスーパーでG-SHOCKが販売されているのをよく目にします。でも、よく見るとなんだか違うように見えるし、素材感もチープだったり……。
いま、世の中には、どんな偽物が存在しているのか?
MonoMax取材班はカシオの羽村技術センターへ取材してきました。
お話を伺ったのは、腕時計製品の品質保証を担当されている小川翔平さんです。
「世界各地のさまざまな工場で偽物が作られているようで、その出来はさまざまです。私達も各地から入手した偽物を多角的に検証し、どのように模倣されているのかをチェックしています」
世界に冠たるG-SHOCKのタフさを実現させる一方、偽物の貧弱さも知り尽くした小川さん。偽物の決定的なダメポイント3点を教えてもらいました。
1)防水性がまるでない!
「私たちの製品のマネをして『20BAR』などと防水性表示されていますが、偽物にそうした防水性はまったくありませんね」
そこで今回は、実際に水圧を加えて防水性をチェックする装置を使用してテスト。
手前は前出の「DW-6930D-1JR」。奥にあるのはマッドマスターのようにも思えるなにか。
少しずつ圧力を変えていったところ、わずか数気圧でご覧の通り。上部にある気泡でわかりますが、これ、時計内いっぱいに水が入り込んでしまっています。もちろん内部の回路がショートしてしまうので、時計としてはもう使えません。
ちなみに今回は水が侵入しただけでしたが、圧力に耐えられずガラスがバラバラに弾けてしまうケースも多いのだとか。
「気密性に問題があるものばかりで、防水性がほとんどないため、ちょっと水にかぶっただけで壊れてしまいかねません」
ちなみに本物の場合、たとえば「20気圧防水」と表示されたモデルであれば、20気圧以上の十分なマージンを持って設計され、品質チェックもされているのことです。
2)擦るとすぐに傷が付く!
「摩耗への耐性が低いというのも、偽物の多くに共通する性質です」
続いて登場したのは、こちらの摩耗試験機。セットした素材の上から、ゴシゴシと硬質素材を擦りつけます。
ほんの5分程度やってみた結果が、こちら。上が本物で、下が偽物。偽物はメッキの耐摩耗性が低くて簡単にメッキが剥がれて、下地の金属の一部が見えてしまっています。
腕元に装着する時計は、ついモノにぶつけてしまうこともある製品。これだけ耐摩耗性が低いと、あっという間にボロボロになってしまうでしょう。
3)汗に弱い!
「意外な盲点に思われるかも知れませんが、時計の品質を保つのに汗への耐性も不可欠なんです」
製品は替わり、こちらは「チープカシオ」の愛称でも親しまれている、カシオのスタンダード時計。
汗への耐性は、いわゆる耐食性といわれる領域です。試験では人間の汗の成分を化学的に合成した溶液に、本物と偽物のケースを投入しました。ちなみにご想像どおり、近くにいると酸っぱい香りがフワッと鼻腔をくすぐります。
数日浸けた結果がこちら。下が本物、上が偽物です。偽物はエッジ部分やボタンのメッキが剥がれてしまい、下地の金属が腐食して黒くなっているのがわかります。こうなると、磨けばどうにかなるものでもありません。
腕時計にはどうしても手汗が付いてしまうもの。それなのに、汗に弱いとなるとラップに包んで着用するしかありません。現実的でないですね。
要は、偽物に共通するのは「見た目はそれっぽく寄せてくるけど、中身はかなり適当」ということ。
今回テストした「水」「擦れ」「汗」への耐性というのは、通常利用でもすごく身近な課題ですが、偽物はこれらがまったくクリアされていないことがわかりました。偽物だと知らずにいても、または知っていたとしても、ちょっとの利用で致命的なダメージを負ってしまいかねません。まさに「安物買いの銭失い」になってしまいます。
ちなみにカシオでは、独自に策定した評価規格を元にさまざまな品質チェックを行っています。ラボには写真のような評価規格項目が掲げられていますが、各種数値がすぐに取り替えられるようになっているのは、それだけ新しい項目を頻繁に策定しているため。
加速させて、さまざまな高さからの落下を再現できる耐衝撃テスト用マシンや……
泥水の中でボタンをプッシュしてもキチンと動作するかをチェックするマシンも(上記動画は別イベント会場で撮影)。
前例のない技術だからこそ、試験マシンもすべてお手製。小川さんは、こうした試験方法の策定も日々研究されています。
真偽を判断するための3つのポイント!
とはいっても、旅行先の露店で水に浸けてみたり擦ってみたりするのは難しいもの。では、真贋を見抜くにはどうすればいいのか?
前述の通り「見た目はそれっぽく寄せてくるけど、中身はかなり適当」なのが、偽物の特徴です。外観をかなり精巧に再現していても、どこか違っているポイントがあったりするもの。次の3点に目を凝らしてみてください。
1)実際に機能を確かめる!
こちらは「GA-110VLA-4AJF」。偽物のほうは針根本の塗装が荒くてこんもりとしていますし、なにより9時位置のインダイヤルがプリントしただけのフェイクです。
冒頭でご紹介した「DW-6930D-1JR」似の偽物も、三つ目のインダイヤルがダミーでした。
- 搭載されている機能が、全てキチンと動作するか
チェックしうる限り確かめてみましょう。
2)外装の仕様を確かめる!
こちらは「DW-5600DC-1JF」。
5600シリーズは、ベゼルを出っ張らせた耐衝撃構造も特徴の1つ。しかしながら、偽物はボタンがかなり出ていて違和感のある見た目に……。さらに、本物はベゼルの丸い凹部にデニム調プリントしないことで、5600シリーズの特徴を際立たせていますが、偽物は全体にプリントされていて、全体的にのっぺりとした印象になっています。
偽物には、こうした細かな外装のこだわりが欠けています。
- 公式の仕様と合っているか
少しでも違和感を感じたら、公式のWebページで確認してみましょう。
3)加工の精細さを見る!
こちらは、いわゆるチープカシオと呼ばわれる「A158WA-1JF」。
こちらのポイントとなるのは、メタルへの刻印の精度です。本物は細いラインがはっきりと刻まれていますが、偽物のほうはなんだかぼんやり。ロゴも正規のものではありません。
裏蓋の刻印も同様。偽物のほうは、精細かつ明瞭な刻印技術を持っていないということでしょう。ちなみに本物のほうは、正しく「MADE IN CHINA」とあるのに、偽物のほうは「JAPAN」と明記されているのは、少しでも騙そうという欲の現れでしょうか。
- 正しいロゴが使われているか
というのも、ひとつの指針になるでしょう。一見すると単なる文字列に見える「CASIO」の表記ですが、どの箇所も原則的にロゴとして定められたフォントや文字間、文字幅でデザインされています。
なお、G-SHOCKのホームページでは、販売されている現行モデルを確認することができます。本物かどうか自信がない場合は品番やデザインを元にスマホでチェックして、それが本物かどうかを見比べてみましょう。
また、そうそうおいしい話はありません。「日本で買うよりも安い」「もう買えないと思っていたレアモデルがあった」といった驚きがあると、旅先の高揚感もあってつい財布の紐を緩めてしまいがちですが、偽物ならあとで後悔することに。G-SHOCKとしての正しい価値を手に入れたいのなら、信頼できるルートから入手するのが一番です。
「私たちが自信をもってお届けしたG-SHOCKの良さを、味わっていただきたいのです」と話す小川さん。「そのために偽物をなくす努力を行っておりますし、本物との違いを皆様にお伝えしています。これからも魅力的なモデルを開発していきますので、ぜひご注目ください」
模造品、わかっていて使うのってあり!? 法務部担当者にも聞いた!
G-SHOCKブランドの保護や模倣品対策を行っている法務部模倣品対策グループにも、お話を伺いました。
──模倣品対策を行っている理由は何ですか?
「お客様の利益、カシオブランド、当社ビジネス、そしてお客様の利益を保護することが目的です。品質の低い模倣品は耐久性も低く、すぐに壊れてしまうなど、お客様自身が不利益を被る可能性があります。本物と勘違いしてしまえばG-SHOCK本来のイメージや信用が失墜してしまいますし、本物の良さを知る機会が失われてしまいかねません。お客様の信頼を維持・向上させるためにも、模倣品の排除活動を積極的に行っています」
──世界にはどれくらい偽物が出回っているのでしょうか?
「具体的な数はつかめませんが、OECDのアナウンスによると世界の模倣品の流通総額は世界貿易額の約2.5%程度と見積もられています。各国の調査会社や政府関係者とも連携し、疑わしい業者や工場の摘発を薦めています。特に中国は、模倣品製造国として重点的に対策しています」
──これら偽物を私たちが使うのはアリなんでしょうか?
「模倣品であることを知ったうえで海外から輸入したり販売することは、商標権侵害に該当する違法行
為です。ご自身で使う分には罪に問われませんが、最近ではフリマサイトなど個人が簡単に売り手になれるケースもあります。。悪質な場合、サイトに削除依頼する場合もあります。模倣品は品質や耐久性が悪く、保証もありません。また、模倣品の売り上げは犯罪組織やテログループの資金源になっているとも言われています。いずれにせよ、真正品の利用をおすすめします」
ファッションでもコピー商品が出回っていて、ごく一部ではトレンド的な人気にもなっているようです。しかし、今回の取材のように製品開発に真摯に携わっている方々の話を聞くと偽物のダメっぷりを再認識できましたし、「ジョークとして旅の思い出に買ってみる」なんてのも、軽はずみの粋を超えた行動だと感じました。
筆者の手元には10年以上使っている「5600」がありますが、いまなおタフで現役であることに、あらためて敬意を評します。
これからもタフで!
カシオ計算機 お客様相談室
03-5334-4869
http://g-shock.jp/
取材・文・撮影/横山博之
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