高級G-SHOCK「MT-G」新作のカーボン積層ベゼルがすごい!
2019年9月4日、G-SHOCK「MT-G」シリーズの新作「MTG-B1000XBD」が発表されました!
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注目は、新開発のカーボン積層ベゼル。切り立つ崖のような側面に現れた、幾層ものライン。こんなの見たことがない……!
開発を手掛けた5名の証言をもとに、「MTG-B1000XBD」の魅力を紐解きます!
左は製品量産化に尽力した中塚義樹さん/カシオ計算機 羽村技術センター 開発本部 時計開発統轄部 外装開発部 第二外装開発室。中央は主にカーボン素材の開発を手掛けた田邉和幸さん/同部 外装開発部 第一外装開発室。右は企画を統轄した牛山和人さん/同部 商品企画部 第一企画室
左はカーボンを駆使した本モデルをデザインした池津早人さん/カシオ計算機 羽村技術センター 開発本部 時計企画統轄部 第一デザイン企画部 11デザイン室。右はベースとなった「MTG-B1000」をデザインした正林盛次さん/同室
ベースとなったのはMT-G人気No.1モデル!
G-SHOCK「MTG-B1000XBD-1AJF」¥135,000(税抜) 10月発売予定
まずは、製品の概要について。
そもそもMT-Gは、異素材を融合させて新たなるタフネスを創造してきたハイスペックシリーズ。今作でもBluetooth接続によるスマートフォンリンク機能と電波ソーラーを掛け合わせた「Connectedエンジン」や透明度の高いサファイアガラスなどグレードの高い機能・素材を起用し、存在感を際立たせています。
今作のベースは、2018年6月に発売された「MTG-B1000」。箱型のフレームを構成してモジュールを保護する「新コアガード構造」とセンターケースにカーボンファイバー強化樹脂を使用し、軽量化&ダウンサイジングを実現。シリーズNo.1人気モデルとなりました。
基本仕様はそのままに、今作では積層カーボンベゼルを新採用しています。
「単なるマイナーチェンジでは?」と思うなかれ。この新パーツの表現には、並々ならぬ努力と、それによってオンリーワンな独創性を生み出しているんです!
たどり着いた「カーボンの積層をデザインする」アイデア!
牛山「今年、G-SHOCKはカーボンに注力してきました。異素材の融合をコンセプトとするMT-Gの新作にも取り込むなら、どう表現すればよいか。実は昨年の『MTG-B1000』で、すでにカーボンケースを採用して耐衝撃性を高めておりまして、それならデザイン面でカーボンを表現できないかと考えたのです」
正林「検討した末、シートを重ねて地層のように見える断面をデザインとして見せられないかと考えたんです」
カーボンモノコック構造を採用した「グラビティマスター GWR-B1000」でもカーボンベゼルを採用し、上面だけでなく側面からもカーボンの織り目を楽しめるよう設計されました。これはカーボンシートを積層したのち、圧力を掛けて変形させる「絞り加工」による演出。つまり上面も側面も、同じシートが表に見えています。
同グラビティマスターの限定モデル「GWR-B1000X-1AJR」(生産終了)では切削加工を行い、断面から見える積層をデザインとして表現。今作の先駆けとなりました。ただ今回の「MTG-B1000XBD」と異なるのは、シンプルな円形だったこと。
「MTG-B1000XBD」はカーボンを美しく積層しつつ、さらにカン脚やリューズガードなど突起を表現。より複雑な構造で積層面を見せるという、さらなる進化を果たしているんです。
池津「赤いラインのない上半分でも、黒×グレーの層を表現しました。これもさりげないこだわりです」
時計を含めたカーボン製品は、一番上のシート部分だけが目に触れるのが一般的。このベゼルのように断面をデザインとして見せる製品はほとんどありませんし、さらに積層でラインを表現したのも画期的な試みです。
2倍以上の労力と熱意で完成した!
使用した素材がこちら。トップ面に織柄のあるカーボンファイバー織地を置き、その下に数十層の黒&赤のカーボンファイバー織地を重ねます。
金型を使い、まずは円錐状に3Dプレス(写真左上)。その後、コンピュータ数値制御の切削作業によって突起部分を削り出していきます。写真右下が完成形です。
シートを均一に積み重ねるだけでも容易ではなく、当初は何度も失敗したのだとか(写真左)。うまくできたと思っても、切削してみるとわずかな厚みの違いで細部にズレが出てしまうことも(上写真右)。
正林「パソコンで3Dデザインを緻密に描いても、実際に積層ベゼルを作るのはかなり難しく、ハードルの高いチャレンジでした」
中塚「白蝶貝文字板などは削り出した結果の個体差をそのまま受け入れる素材ですが、今回は切削して現れた断面まで精密にコントロールしようという試み。高度な技術と、設計・デザイン間の緻密な調整が必要でした」
積み重ねるシートの枚数を変えたり、シートの厚みを変更したり。納得の行く「積層」を安定して生産できるまで、試作数は通常モデルの2倍以上に及んだといいます。
写真上が完成形、下が開発段階のもの。
田邉「最初は絞り加工を多用しようと考えたのですが、エッジがだれてしまい、MT-Gのスッキリしたイメージとは合わないという話になりました」
そのため、ストンと切削してエッジを立たせることに。そうしてシャープな印象に仕上げつつも、角をわずかに面取りすることで落下衝撃への耐性も高めています。
またカーボンの質感に目を向けるため、ベゼルに刻まれた機能表示部の色埋めは白から黒へ変更されました。
写真上が今回の「MTG-B1000XBD」、下がベースになった「MTG-B1000」。
素材が変わっただけのように見えますが、実はカーボン積層ベゼルのほうが突起部分の厚みが増していたり、わずかに小型化していたりと微妙な変化が。素材の違いを踏まえ、G-SHOCKが誇る耐衝撃性を確保するためのアレンジです。
高級感を出すべくディテールも仕様変更!
デザインの仕様にもアレンジが。
池津「MT-Gの高級感を表現するため、今作では上下メタルパーツ正面部分や4箇所のビスをヘアライン仕上げからミラー仕上げに変えました。バンド接続部にも差し色を加えています」
さらには9時位置のインダイヤルリングにレッドの差し色を加えるなど、各所に調整が入っています。
牛山「カーボンは先進素材である一方、『高級感』の表現は易しくない素材。上位モデルであることを伝えるため、設計もデザインもとことん追求したんです」
白のラインを見せるブルーカラーモデルも!
G-SHOCK「MTG-B1000XB-1AJF」¥120,000(税抜) 10月発売予定
なお、キーカラーにブルーを起用した樹脂バンドモデルも同時にラインナップ。
こちらはホワイトのラインで積層を表現しています。
万感の想いが詰まった自信作!
最後に、開発を手掛けたみなさんのコメントをまとめました。最初にデザイナーの正林さんと池津さん。
正林「時計の顔はもちろん、背面も側面もすべてにこだわり抜いてMT-Gらしいかっこよさを追求しました。これまでにない素材感の表現で、『次のかっこよさ』を生み出せたと感じています」
池津「MT-Gってある意味一番G-SHOCKらしくて、男子好みな作り込みを実現できるシリーズ。デザイナーの僕たちすら『ここまでやるんだ!?』と思う要素もいっぱいあるんです。今回のカーボン積層ベゼルのよさも、ぜひ広く伝わるといいなと思います」
次に設計の中塚さんと田邉さん。
中塚「『ここまで作れました!』と自慢したくなるものができました。カーボンでこれをやってしまうというのは、他にないと思います」
田邉「このMT-Gはもともと評判のよいモデルでしたが、カーボンが加わって魅力がさらに増したと思います。ぜひ手にとって、よくよく眺めていただきたいですね」
最後は企画の牛山さん。
牛山「G-SHOCKは幅広い価格帯を持つ珍しいブランド。このMT-Gは高額なポジションに位置している分、新しい素材や技術に積極的にチャレンジしています。今作もデザイナーやエンジニアがたくさんの労力と情熱を注いだハイエンドモデルであり、私達の想いが多くの方に届くといいなと思ってます」
カーボン積層ベゼルという、新たなるタフ&独創性のシンボルを手に入れたMT-G。G-SHOCK、そして腕時計の可能性をさらに広げます。
●ケースサイズ (H×W×D): 55.8×51.7×14.4mm●質量:112g(MTG-B1000XB-1AJF)/171g(MTG-B1000XBD-1AJF)●トリプルGレジスト●ねじロック式リューズ●20気圧防水●タフソーラー●電波受信機能●モバイルリンク機能●針位置自動補正機能●ワールドタイム:世界27都市+UTCの時刻表示、ホームタイムの都市入替機能●ストップウオッチ●タイマー●時刻アラーム●バッテリーインジケーター表示●パワーセービング機能●日付・曜日表示●フルオートカレンダー●LEDライト
カシオ計算機 お客様相談室
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取材・文・撮影/横山博之
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