鋳物ホーロー鍋で圧倒的な支持を受けているバーミキュラを製造する愛知ドビーから、新たな調理器具「バーミキュラ フライパン」が登場しました。予約開始からわずか3週間で、予約台数が1万5000台を突破した人気アイテムを一足先にお借りしました。その実力を存分にチェックしました。
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結果を先にいうと、これは一生ものになるホンモノの道具です。買うか買わないかではなく、いつ買うかを考えるアイテムでしょう。
圧倒的に高い調理性能を支える高度な製造技術
ホーロー鍋に続いてバーミキュラが取り組んだ調理器具は、フライパンでした。鋳物のフライパンといえばアウトドアで人気のスキレットが代表的で、分厚くて重いというのが特徴です。しかしこのバーミキュラ フライパン」は、高度な技術によって薄さと軽さを実現し、鋳物の良さと使いやすさを両立しています。
製品をチェックしてみましょう。まずラインナップは、大きな肉などを焼くのにも便利な26cmと、深めで煮込みなどにも使いやすい24cmの2種類です。
価格は、26cm ¥16,830(税込)、24cm(深型) ¥16,280(税込)
持ち手の部分は天然木になっており、オークかウォールナットが選べます。このウッドハンドルは見た目だけでなく、握ったときの感触もよく、しかも水洗いできるというすぐれもの。使っていくうちにエイジングによる変化も楽しめそうです。
本製品の特徴でもある本体の薄さと軽さは、従来の鋳物フライパンとは全く異なります
10年間の技術の蓄積でようやく実現できたという本体の約1.5mmという最薄部は、驚きの薄さです。重さも26cmモデルで、実測1.128kgでした。実際に持ってみても、形状のバランスがいいためか、先端部にそれほど重量を感じないで、楽に振れました。
この薄い本体の表面を覆うホーロー加工も新たに開発。油なじみが良く、焦げ付きにくく、さらに強度も兼ね備えています。そしてこの鋳鉄とホーローによる「エナメルサーモテクノロジー」は、食材から出た余分な水分を、瞬間的に蒸発させて、旨みを凝縮します。
また熱源はガス、IHどちらにも対応します。厚めのしっかりとした底面部を見ると、「VERMICULAR」の文字が刻印されています。デザインといい、素材感といい、全体に高級感や上質感が漂っています。
また別売りになりますが、ガラス製のフタも用意されています。持ち手の部分は、本体と同じ鋳鉄になっており、それがフタのスタンドになるという工夫もあります。デザインや使い勝手に隅々まで行き届いた配慮を感じます。
フタは別売り。26cm フライパン専用リッド¥4,070(税込)、24cm フライパン専用リッド¥3,850(税込み)。
簡単な料理が圧倒的においしくなる驚き
調理する前に80ページもある付属のレシピブックを見て、火加減と基本の使い方を確認しておきます。まず強火でしっかりと予熱をし、油をなじませてゆらゆらと煙がでてきたら、火加減を調整して調理します。蓄熱性の高さを活かすためにこの予熱がとても大切です。
フッ素加工のフライパンは撥水性が高く、水をはじくので長い時間がかかります。それに対し、バーミキュラ フライパンは親水性が高く、水がよくなじむため、炒め物も食材から出た余分な水分を瞬時に飛ばし、旨みを凝縮し、シャキシャキに仕上がるそうです。
付属レシピに掲載されているメニューはどれもおいしそう
絶品のもやし炒め
このレシピブックで最初に紹介されているレシピが「箸の止まらないもやし炒め」というレシピです。もやしを塩とコショウで炒めるだけの調理です。
強火で30秒ほど加熱したフライパンに油をなじませ、煙がでてきたらもやしを入れて1分ほど炒めます。もやしの表面が透き通ったら、塩とコショウをさっと混ぜ合わせるだけという超簡単料理。
ところがこれが激うまなんです。しゃきしゃきのもやしの食感に、しっかりとした野菜の旨みを感じます。「もやしってこんなにおいしいのか!」と驚かされるほどでした。
シンプルなのに激うまだったもやし炒め
味の濃いベーコンエッグ
シンプルな卵料理、ベーコンエッグも試してみました。予熱後ベーコンを1分ほど加熱して、脂がでてきたら裏返して、卵を入れます。弱火でじっくりと加熱して、好みの固まり加減になったところで塩、コショウをして火を止めます。
単純な料理ですが、ベーコンや卵の表面はカリッとして、卵をカットすると黄身が少し流れるくらいの焼き加減。黄身の濃厚さとベーコンと白身のカリッとした部分の取り合わせが絶妙です。卵の濃さを感じられました。
カリッとした白身にとろっとした黄身が濃厚で美味。
パラパラのチャーハン
フライパンの蓄熱性と、強い火力で調理できるので、チャーハンなどの中華料理にも向いています。十分に予熱したフライパンに卵を入れて、すぐにごはんを投入。手早くかき混ぜていると、だんだんパラパラになっていきます。鍋を振らなくても、しゃもじで混ぜていくだけでもできます。今までパラパラにするのに苦労していたのが、嘘のように簡単でした。
そこにハムやネギなどの食材を追加して、塩、コショウに、少しのしょうゆを入れてできあがりです。食べてみるとお店のチャーハン並の仕上がりになります。ベタベタになりがちな家庭のフライパンチャーハンが、一気に中華料理店の仕上がりになります。
強火で手早く炒めるからチャーハンがパラパラにできる。
焼きめパリッとした餃子
中華つながりで、市販の冷凍餃子もやってみました。予熱したあとに一度火を止めて、餃子を並べ、フタをして中火で加熱。5分したらフタをとって、弱火にして水分を飛ばして焼き上げたら完成です。
冷凍餃子の説明書ではフッ素加工のフライパンを基準にしているので、その通りにやるとちょっと焦げ目が強くついてしまうこともあります。蓄熱性能が高いので、焼き目をつけるような調理では、少し火力を弱めるなどの調整が必要かもしれません。
できあがった餃子は、ふだんフッ素加工のフライパンで焼いているときよりも、底面の焼き目はパリッとしています。それでいて、ほかの部分はジューシーで、おいしくできあがりました。
冷凍餃子でも焼き目がパリッとしておいしい
ふっくらハンバーグ
フライパンで焼く肉料理として、ハンバーグを作ってみました。レシピ本に掲載されている方法ではなく、ふだん自分が作っているつなぎの少ない肉っぽさの残るレシピで作りました。予熱したあとに、中火で3分ほど加熱して焼き目を付けて裏返します。1分ほど焼いたら、弱火にして、フタをして5分ほど加熱しました。
表面にきれいに焼き色がつくのはもちろんですが、いつもよりふっくらと焼けていることに気づきました。ふだんと同じレシピなのに、ふだんより2段階くらいレベルがあがった感じがしました。
またソースはレシピ本に掲載されているとおりに、バルサミコ酢と赤ワインをベースにしたものを作ったのですが、これがとてもおいしいソースでした。バーミキュラに付属するレシピは、いつも外れがなくおいしいと思います。
ハンバーグもふっくらとおいしくできる。レシピのソースがまた美味だった。
サクふわのホットケーキ
フライパン調理といえば欠かせないホットケーキも試しました。予熱のあと一度火を止めて、生地を入れてから、ごく弱火で焼きました。いつも焼いているフッ素加工のフライパンよりも、表面の焼き色が少し強く出ます。
食べてみても違いがあります。フッ素加工のフライパンで焼いたものが、ふわふわの食感だとすると、このフライパンで焼き上がったホットケーキは、表面部分がサクッと、中がふわっとする仕上がりです。どちらがいいかは好みの違いですが、このサクふわの食感はくせになるおいしさです。
焼き目はさくっとして、中はふんわりとしあがったホットケーキ。
鍋的に使ってスパイスカレー
24cmの深いタイプは、鍋的に使うことも可能です。今回は玉ねぎとトマトをベースにしたチキンスパイスカレーを作ってみました。予熱をしたあとに一度火を止めて、オイルとスパイスで香りを引き出します。その後に玉ねぎを炒め、トマト缶を入れ、フタをしてからしばらく煮込みました。
カレーのように炒めてから煮るという調理にも、このフライパンはぴったりです。玉ねぎをしっかり炒めるときも、水分が飛びやすく、手早く炒められました。また煮込みに関しても、蓄熱性が高いので効率よくできて、30分くらいで完成しました。しかもホーロー鍋と同じように、野菜の甘みやチキンのうまみも引き出されています。煮物にもとても向いていることを実感できました。
炒めて煮込むスパイスカレーも野菜の甘みとチキンの旨みが引き出されていた
手入れも簡単で末永く使える一生もの
このフライパンは表面にホーロー加工がされているので、鉄のフライパンよりは食材がくっつくこともなく扱いやすいです。でもフッ素加工のようにくっつかない加工がされているわけではないので、焦げ目がフライパンに残ることもあります。
そんなときには、水を入れて、しばらく火にかけて沸騰させれば、焦げは簡単に取れます。このあたりの使い勝手は、ホーロー鍋と同じです。ホーローガラス質ですから、高温に強く、フッ素加工と違って、高温による有毒ガス発生の心配もありません。
焦げ付きも水を入れて沸騰させれば簡単にとれる
もしホーローが欠けてしまったり、割れてしまったときには再コーティングのサービスも用意されています(有料)。さらにその際にウッドハンドルも新品に交換できます。大事に使っていけば一生もののフライパンになるのです。
このフライパンは、フッ素加工のフライパンとは使い方が少し異なり、まずはじめに火加減や、予熱などの基本的な使い方に慣れる必要があります。ですが、その感覚を身に付けてしまえば、プロの火加減を家庭で手軽に手に入れることができます。
ごくごくシンプルな材料で、簡単な調理をしても、今までとはまったく違ったおいしさを楽しめます。シンプルな料理こそ、実力の違いが発揮される気がします。それでいて一生ものですから、そう考えるとむしろ16000円程度の価格は、お買い得とさえいえそうです。
(取材・文・写真/栗山琢宏)
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