あおり運転の問題をきっかけに一気に広まったドライブレコーダー。いまや装着率は6割を超え、もはや“付けていて当然”の時代だ。だが、普及の裏で見過ごされてきた現実がある。それは、「ドラレコがすべてを記録してくれるとは限らない」ということ。フロント・リアのカメラを備えてもなお起こる想定外の空白と、記録されない瞬間。安全の象徴となったこの小さなカメラに潜む、意外なリスクを見ていこう。
「付けていれば安心」は危険!ドラレコの死角と限界
従来からもあったものの、あおり運転が社会問題化したのをきっかけに爆発的に普及が進んだのがドラレコだ。某用品店の店長に聞くと当時、安全意識、そして自動車感度の高い年配を中心に、大げさでなくドラレコを求めて店に押し寄せてきたという。確かに連日、ニュースやワイドショーであおり運転を取り上げていれば付けたくもなるだろう。
日々増えているので正確な数字を出すのは難しいが、2025年初頭での装着率は65%ほどで、かなりのクルマが付けていると言って過言ではない。以前はプライバシーの問題などで積極的でなかったドライブレコーダーの純正組み込みも進んでいたりと、ドラレコなしではありえない社会だ。もちろん付いていれば安心だし、いざというときに我が身を助けてくれる。大事になっても以前は裁判の証拠にはならなかったのが、現在ではなるようになるなど、ぜひ付けておいてほしいアイテムのひとつだ。ちなみに裁判の証拠にならなかったのはデジタルのため、改ざんが可能というのが理由だった。
そのような社会的潮流のなか、あえて言うと、「ドラレコは完全ではない」。つまり付けてさえいれば安心ではないのだ。
トンネルを抜けた瞬間の白飛びや解像度などの性能的な問題ではなく、盲点的な問題が存在する。わかりやすいところで言えば、フロントだけ付けている場合で、これだと後方からやられるのが基本のあおり運転の証拠は記録できない。後ろから前に回られて行く手を阻まれるタイプのあおり運転には効果は発揮するものの、後方からが記録できないのはかなり痛い。もちろんよくある後方からの衝突や横からの突っ込みも記録はされない。
前後に付けても、実際に事故に遭うと完璧ではないことがある。筆者も実際に遭遇したのが横道から自転車が飛び出してフェンダーに衝突したという例。ドンという音とともにフロントガラスがバリっと一気に割れたため、記録されているのはただ視界が一瞬にして真っ白になった映像だけ。横をカバーしないだけでなく、近すぎるとなにが起こっているかが記録されないというのが原因だ。
対処法としては事故に遭ったら後続車に声をかけて、ドラレコを付けていればその画像を提供してもらうといい。そこには全体がしっかりと写っているのでより正確な証拠となる。自分の場合は実際に助けられてほぼ過失はなし。逆に前方で起った事故に対して映像を提供したこともある。この全方位問題、360度タイプであればかなりこの問題は解消されるものの、超広角なので横や後方はかなり小さくしか映らないし、シートや乗員も邪魔になったりする。360度タイプに後方をカバーするドラレコを組み合わせるのがオススメ。
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この記事を書いた人
ライター近藤暁史
男だてらにお堅く学習院大学文学部国文学科卒。ファッション誌から一気に転身して、自動車専門誌の編集部へ。独立後は国内外の各媒体で編集・執筆、動画製作なども。新車、雑ネタを中心に、タイヤが付いているものならなんでも守備範囲。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。自身のYouTubeチャンネル「こんどう自動車部」では、洗車・自動車のメンテナンスなどを中心に、クルマに関わる裏技を紹介中!
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