2024年ももうすぐ終わり……というわけで、1年のヒットモノを振り返るあの大人気企画が帰ってきました!ヒットモノのなかでも、特に影響力が大きかった精鋭をピックアップして編集部が大賞を決定。開発者や業界のプロに取材することで、ヒットの理由を深掘りしていきます。
今回では、学生の声を元に生まれたアイテム、コクヨの「本に寄り添う文鎮」をチェックしてみました。学生だけでなく、大人にも大ウケし、たちまち話題になった逸品の開発秘話に迫ります……!
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ページめくりのしやすさ傷つきにくさを徹底的に追求
学校の書道の授業などで、誰もが一度は触ったことがあるはずの文鎮。そのアイテムが思いがけない進化を遂げて大人気となった!学生から大人まで虜にした魅力とアイデアのきっかけを開発者にインタビューした。
コクヨグローバルステーショナリー事業本部
開発本部開発第2部企画開発第1グループグループリーダー/清水陽芳さん
「KOKUYO ME」「GOOD TOOLS」シリーズなどの企画責任者。以前の所属部署時代に「本に寄り添う文鎮」を企画する。
誰もが知る文鎮が2024年に大進化して話題となった。開発を担当した清水さんによると、きっかけは中高生からの声だったそう。
学生は勉強をするとき、参考書を開いたままにするため、クリップで挟んだりスマホや肘で固定したり、様々な手段をとっている。それでも安定して開いたままにすることはできず、クリップを使うと本が傷つくというデメリットも。この悩みが開発のヒントになった。
「当時、私は学生向けのアプリを開発するため、月イチで中高生20人ぐらいとミーティングを行っていました。あるとき、一人の学生が『勉強中に参考書が閉じないよう、クリップで押さえている』という発言をしたんです。そうしたら、他の学生も次々と『私もやっている』と話し始めました。より詳しく聞いてみると、クリップのギザギザで参考書が傷ついてしまうとか、ページをめくる際にいちいち外すのが面倒だという悩みも話してくれました。
そこで、参考書を傷つけずに押さえられてページめくりしやすいアイテムがあればと思ったのがきっかけです。いくつか試作品を作り、試行錯誤してみて、最終的には本の上に置くだけのシンプルなものが一番いいということになり、文鎮に落ち着きました。ですが、書道用の直線的な文鎮では、転がってしまい本を安定して押さえられません。本にフィットする形状にしようという構想は、当初から頭にありました」
文鎮のアップデートが始まった。
「本を傷つけずに開いたままで安定させる」アイテム開発のため、企画担当の清水さんは様々な試作品を作った。最も文鎮に近いのが右上の棒状の袋。中に鉄粉が入っており、重さがありながら柔らかい形状。真ん中の文鎮はソフト素材のカバーに包まれた状態だ。
「本には様々な種類があります。なので、たくさんの本を開いて横から写真を撮り、本のカーブの平均値を割り出しました。また、置いたとき文字を邪魔しないよう幅は10mmに、長さは参考書に合う240mmに設定しました。重さもいろいろ試した結果200gに。素材は、この形状と重さを実現できるものとして真鍮を採用しました」
完成した『本に寄り添う文鎮』は、2022年に数量限定でテスト販売したところ即完売。好感触を得て、価格や生産体制の見直しなど正式販売に向けた準備を行い、素材も真鍮製に加えて鉄製を用意した。そして2024年に正式販売すると、たちまち話題に!
「もともと学生向けに作った商品なのですが、いざ発売してみると、大人の方にもかなりご好評いただけました。読書に使う方が多かったのは意外でしたね。本まわりで、まだ気づいていないニーズがあると思うので、今後はそんな方向も進められたらと思っています」
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この記事を書いた人
ライター金山 靖
文房具、家電、インテリア、雑貨などライフスタイル系グッズに精通。商品の企画開発担当者をはじめ、タレントや文化人などへのインタビュー経験も豊富。カップ麺やお菓子などグルメ全般にも造詣が深い。
Website:https://monomax.jp/
お問い合わせ:monomaxofficial@takarajimasha.co.jp
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