ビジネスにおける喫緊の課題として、多くの企業が取り組んでいる「DX(デジタルトランスフォーメーション)」。これまでアナログ的な手法で行ってきた業務をIT・デジタル化しようというもので、さらなる効率化や新たな価値の創造を生み出せるとの期待が高まっています。
そんなDXを精力的に推進しているのが、生命保険業を営む日本生命グループ。2019年度に「日本生命デジタル5カ年計画」を策定し、グループ一体となってDXを担う人材の育成に取り組んでいます。
今回、その施策の一部を見てきました!
CONTENTS
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日本生命グループIT研修の一大拠点「TREASURE SQUARE」
日本生命グループにおけるDXの取り組みを象徴するのが、2022年3月に開設された「TREASURE SQUARE」。IT人材育成の高度化とDX推進を目的としたIT人材研修施設です。
専門業者に外注してDX化を進める企業も多いなか、日本生命グループは3000名超の社員を対象にIT人材の育成を計画。この「TREASURE SQUARE」が計画の拠点となっています。
施設内には、最大150名が受講可能な研修スペースを設置。
さらには研修内容をオンラインで配信できる設備も併設。リアルでの対面研修だけでなく、オンラインでの受講も可能にしています。
憩いの場となったり、カジュアルな雰囲気で談笑できるオープンスペースも。
カフェブースも用意。コーヒーを味わいつつ、この場で知り合った人と関係を深めることもできます。
壁や天井、床の色みや素材感にもこだわり、人が集まりたくなるような空間を築き上げています。
社長&担当5名によるDX座談会をレポート!
2022年6月7日には、「TREASURE SQUARE」にて「DX座談会」が行われました。日本生命の清水博社長とグループ5社の代表者が一堂に会し、各社の取り組み状況を報告し合うというイベント。その様子を取材してきました。
日本生命 社長
清水 博さん
グループのトップである清水社長。DX推進の旗振り役としても先頭を走っています。
清水「人とサービスとデジタルで、お客様と社会の未来を支え続ける。それが日本生命グループが掲げるビジョンです。従来は経営戦略を実現するためにITを活用していましたが、今はITが経営戦略を作る時代になってきました。なによりも人材がすべてであり、育成の重要性が増しています」
大樹生命保険 システム企画部
浜口栄介さん
1994年の入社以来、情報システム畑一筋で歩んできた浜口さん。
浜口「大樹生命ではTeamsやZoomなどを使った非対面営業や、『お客様マイページ』で手続きを完結できる内容を増やすなど、お客様との接点のデジタル化を進めてきました。DXの取り組みについては外部研修リソースの活用やデジタル化案件を通じた育成などを通じ、IT人材の育成を実施しています」
ニッセイ・ウェルス生命保険 IT本部 システム企画部
勝山貴彦さん
勝山さんはニッセイ・ウェルス生命にてITガバナンス領域での職務に従事。IT戦略の立案・企画を担当されています。
勝山「近年は代理店保険募集手続きや各種ワークフローにおいてペーパーレス化を推進したり、ITを活用した働き方改革を導入するなどしてきました。IT人材育成においては、もともと即戦力人材の中途採用が主であったことから個人のスキルアップに依存していたのですが、現在は組織としての目標を明確にし、それに個人の成長目標を結びつけて可視化することで人材育成を組織的にサポートできるようにしています」
はなさく生命保険 CS戦略部
渡邉佑亮さん
渡邉さんは国内電機メーカーでシステムエンジニアとして従事したのち、2018年からはなさく生命で保険商品販売のシステム開発を担当。
渡邉「すばやく価値を提供するため、Web申込みサービスなどにアジャイル開発の手法を採用し、月1回のペースでサービスアップデートを実施しています。IT人材においてはキャリア採用で獲得し、OJTをベースとして早期に自立するよう支援しており、体系的な研修プログラムの整備までは手を出せていないのが実情です」
日本生命保険 IT統括部 デジタル推進室
阪本雅義さん
グループ全社のデータの利活用を推進するとともに、DX人材の育成や、DXを推進しようという風土作りにも携わっている阪本さん。
阪本「『日本生命デジタル5カ年計画』を立ち上げ、これまでの前半3カ年ではコロナ禍での非対面活動を支えるデジタルインフラや全社横断のデータ分析基盤を整備してきました。これからの後半2カ年は、お客様体験価値の向上に向けた施策を推進するとともに、これらプロセスで蓄積されるデータの利活用が最重要課題になると認識しています」
ニッセイ情報テクノロジー 基盤ソリューション事業部
田原邦宏さん
入社以来一貫してインフラ領域に従事してきた田原さん。公益社団法人企業情報化協会(通称:IT 協会)が顕彰する「Super SE 100人衆」にも選ばれた実力者です。
田原「当社は日本生命グループをITで牽引する役割として、テクノロジーでDX推進に努めてきました。新技術系研修の受講数や資格取得数は着実に増加しており、IT人材育成を進めています」
ひとしきり各社の報告が終わったあとは、質疑の時間に。
IT人材育成の現状
浜口「大樹生命は当時の採用抑制を背景に30歳前後の人材が薄く、早期に育成するような活動をしているのですが、既存システム/業務に精通しているDX人材が不足しがちという課題を抱えています。こうしたなか、どこまで既存の社員、どれくらいの年齢にまで対象を広げていくのかが悩みでもあります」
田原「なかなか難しいところですが、当社ニッセイ情報テクノロジー(以下NIT)には新技術系研修のメニューだけでなく、レガシーシステムとも呼ばれるSoRを学ぶ内容もそろっています。それらメニューも参考になるかもしれません」
勝山「ニッセイ・ウェルス生命でもNITの研修を活用させてもらっておりますが、DXとしては、サービスの変革が肝になってくると思っています。社内の業務改革であったり、お客様に新しい体験を提供したり。無限な可能性があると思っていますけども、やはり自分たちだけの力で実現するには難しいところもあり、現在のように日本生命グループという組織として目標達成に向けて実行できているところは大きな歩みになっていると考えています。もちろん我々のようなIT部門に属する人間は、これからも日々研鑽していく必要があります」
清水「生保は長い期間にわたって契約を確実に保守し、維持し続けていかなければなりませんから、生保のシステムは非常に堅牢。そうした既存のシステムの上にDXの先端ITが乗っているわけですが、既存と先端、どちらか一方がよければいいというものではありません。携わった仕事や研修のすべてが学びであり、無駄はひとつもないと私は思っています。プロフェッショナルとは、学び続けられる人のこと。人材を育成する側としては、既存システムも先端ITも、あれもこれもという形で取り入れることが大事だと思いますね」
若い会社ならではの組織・風土作りの課題
渡邉「はなさく生命はできて間もない会社で、開業当初は100人にも満たないメンバーで運営していました。ただ現在はメンバーが倍々に増えてくるなかで、以前のような自由な議論、自然と立ち話する文化が希薄になってきました。規模感の変化による課題について、みなさんはどう対処してこられましたか?」
阪本「当社日本生命は、はなさく生命とは対極的ですが、風土醸成は掛け声だけでは進まないのが実際のところだと思います。全社の技術関連情報を集約したイントラ専用のページを設けたり、オープンのセミナーを定期開催したりと、知識習得の機会を提供することがひとつの助けになると思います。また、そこで得た知識を試せるような実現実証の機会も提供することも大切です。たとえば『AI-OCRの製品を実際に使ってみたい』となったとき、いきなり業務に適用するのはリスクもハードルも高いので、まず予算と期間を決めてスモールで実際に使用し、効果が見込める場合に実業務に活用するというPoC(Proof of Concept:概念実証)を行います。知識習得と実現実証の場の提供、この2つの軸が重要だと考えます」
勝山「ニッセイ・ウェルス生命もできたばかりの組織ですけども、いくつかのPoCを実践してきました。年輪を重ねるごとに仕事が属人化し、ナレッジが承継されない課題が生じてしまう可能性を危惧しています。DXによって全社横断的な目線で物事をとらえ、課題解決に役立てていく視点も必要だと思います」
浜口「学びの風土を作るためには、やはり旗振り役が重要です。当社大樹生命ではDX戦略部がその役割を担うことになると考えています。また、PoCをうまく回していく仕組み作りにも、いっそう注力していかなければならないと感じました」
田原「各社の文化について直接伺う機会がなかったので、非常に勉強になりました。最近の若手社員はコロナ禍で強制的に働き方が変わり、通勤時間も省略され、自らが学習できる時間が増えています。実際に話をしてみるとかなりアクティブで、自発的に学んでいる人も多い。そうしたなか、会社として提供できるのはある程度フレームワークとして共通化したもので、限界があります。個別の欲求を吸い上げ、それを上手に応援してあげる仕組みをグループみなさんで行えるようになれば、より成長できるのではないかなと思ってます」
清水「組織風土の醸成には『何を実現するためか?』を常に頭の中に描いていくことが重要だと思うんですね。そこで私がいつも思っているのは、『組織を動かす』『組織の進化を止めない』の2つです。複数人が集まって、一人ではできない仕事をより早く、深く、大きく、スピーディに行うという組織の意味を念頭に、組織全体のゴールや目標を明確にしておく。そして、その組織に属する一人ひとりの構成員が、自分の役割と責任をはっきりさせて、コミットメントする。その役割や責任をしっかり果たせているかをチェックすることも大切ですね。そして、『組織において完成形はないんだ』と考え、常に進化し続けなければいけない。仕事がうまくいっても、より高いレベルになるにはどうしたらいいかと自分で問題提起し、意識的に自ら組織をゆさぶっていくのです。こうした考えを、僕自身大切にしているんです」
日本生命グループのDX推進は着実に進んでいく
座談会の取材を通じ、「日本生命デジタル5カ年計画」の目標達成に向けて着実に歩み続けていることが伝わってきました。
DX推進によって日本生命グループのサービスがどのように進化し、私たちの暮らしにどのようなメリットがもたらされるのか。
これからの動きにも注目です。
ご加入の生命保険に関する各種お手続きやお問い合わせは……
ニッセイコールセンター
0120-201-021
日本生命保険公式webサイト
撮影/坂下丈洋(BYTHEWAY)
この記事を書いた人
ライター横山博之
カバン、時計、ファッションなど男性のライフスタイルを彩るモノを領域とするライター。デザイナーや職人などモノづくりに関わるキーパーソンへのインタビュー経験も豊富。時代の先端を行く技術やカルチャーにも目を向ける。
Website:https://monomax.jp/
お問い合わせ:monomaxofficial@takarajimasha.co.jp
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