再現カップ麺とは「モノマネ」、オリジナルにはない“手軽さ”と誇張した“デフォルメ”がポイント!
実際プロジェクトが始まると、元ネタを分析しスープと麺を作るのですが……袋麺は麺をお湯で加熱し茹でて作るのに対し、カップ麺はお湯を注いで麺を戻す「湯戻し」と、これだけで麺の条件が大きく異なります。
カップ麺はたくさんの「穴」が空いていて、そこにお湯が入りこんで麺を戻すんです。(ご当地袋麺は生麺を乾燥した乾麺なのでお湯の中で熱を加えて戻す。)すでに麺の条件が大きく変わるので、当然スープも麺の特性(スープの絡み方や食感)に合わせてゼロベースから見直さなけれななりません。
今回大事だったのは「コスト」。もちろん麺やスープを全てオリジナルで作ることもできます。が、それでは莫大なコストと期間がかかります。多くの皆さんにご当地袋麺の良さを広く知っていただくためにはコストを抑えつつもオリジナルに近い(完璧とは言いません)ものを届けなければなりません。液体スープとかやくの計2つ、麺はすでにサンヨー食品で取り扱っている既存の麺からそれに近いものを選び、スープはその麺に合わせてオリジナルに寄せなければなりません。
このように制約の多い中、開発はスタートします。たくさんのサンプルを作り多くの議論を重ねた中からよりオリジナルに近いものを選択しブラッシュアップしていきます。日本は食料自給率の低さから原材料は世界中から集めています。インスタントラーメンは総合芸術とも言われている所以が、この世界中から素材を集めるところからです。そしてカップ麺はオリジナルを再現するにあたり「デフォルメ」も考えなければなりません。なぜならばあくまで「モノマネ」だからです。ここが一番難しいところです。
こちらが完成したカップ麺のオホーツクの塩ラーメン。具材は味付豚肉とネギという構成。
スープはオリジナルより口当たりをよくし帆立でコクと余韻を足しました。オリジナルに寄せるべくコストの許す限り、オリジナルで使用されているオホーツクの塩を30%入れ込みました。
オリジナルはノンフライ乾燥麺でカップ麺は油揚げめんです。油揚げめんはスープに植物油が滲み出るため、時間経過によりスープのテイストが変わっていきます。ですからそれも含めてスープのテイストを逆算しなければなりません。オリジナルより食感は柔らかいですが、形状は近いものを選択しました。
こちらは赤龍のカップ麺です。具材はちんげん菜、肉そぼろ、ネギの3種類です。
スープはオリジナルよりも最初にすすった時のインパクトを重視しました。後半は醬の旨味とごまのコクという設計です。ここら辺はオリジナルと同様です。
麺は本家がストレートノンフライ麺に対し、ちぢれ油揚げめんです。全く別物になるとスープの絡み方や香り方が完全に異なるため、設計はかなり難航します。これは私のわがままに付き合ってくれたサンヨー食品さんの開発者の素晴らしさを感じました。
再現カップ麺は「モノマネ」と考える私ですが、オリジナルを誇張した「デフォルメ」、そしてなにより「手軽さ」がカップ麺の良さと考えます。
モノマネ番組をついつい見てしまうのは、オリジナルの魅力を短時間で面白く伝えてくれるからだと思っています。再現カップ麺にはその魅力がたっぷり詰まっており、バラエティとして非常に楽しいものがあります。
ぜひ皆さんもオリジナルと比べてみて、製作者たちの意図を感じてくれれば幸いです。
食文化研究家・大和イチロウ
インスタントラーメン専門店・やかん亭代表。即席麺「一日一麺」を掲げ、35年で25,000食を実食。
インスタントラーメン専門店やかん亭
ラーメンマニア・大和イチロウがその足と舌で日本全国から集めた絶品のご当地袋麺を取り扱う専門店。300種類を超えるおいしいラーメンが大集合!
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食文化研究家大和イチロウ
趣味として、時にはカップ麺や袋麺の監修を手がける“中の人”として、日々インスタントラーメンにまみれているラーメンマニア。即席麺「一日一麺」を掲げ、36年で25,000食を実食。その足と舌で日本全国から集めた絶品のご当地袋麺を取り扱う専門店・やかん亭代表。
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